まず、2012年・64歳を迎える春、アメリカ西部の荒野に広がるグランド・キャニオンやモニュメント・バレー、イエローストーンなどを20日ほどかけて、妻と二人でアメリカ西部を車で巡る旅に出かけた。英語力はお粗末だったが、旅のスケジュール、予約から運転まで、ちょっと「自立」した旅になった。
もう少しこんな旅をしてみたいと思っていたのですが、のびのびになった2年ぶりの旅は、一転、息子夫婦と4人でタイ・プーケットへ、ぐーたら旅行。
プーケットぐーたら旅行
第2日 5月29日
夜が明けきらないうちから目が覚めてはウトウトしていたが、とうとう7時ごろには起き出した。昨夜は真っ暗で気づかなかったが、ベランダの目の前は芝生の庭で、すぐにヤシの木越しにアンダマン海ときれいな砂浜のビーチ。ドドドドッザップ~ン、繰り返し押し寄せる波。太陽は雲の向こうでどんより、しゃっきりしない朝だが、ま、何といっても今は雨季なんだから仕方ない。
ベランダのデッキに座ってぼんやりしていたが「よし、散歩に行こう」。砂浜まで出て、波打ち際に立って見回す。南と北の端に岩だらけの突き出した岬に挟まれた600~700mほどビーチだ。北の小高い岩だらけ岬に見える建物群がタイでは名の知れた有名ホテルと、ガイドブックに書いてあった「Mom Tri's Villa Royale」だろう。よし、とりあえず南だ。
ビーチに沿って、ずっとデッキとパラソルが並んでいる。(朝はだれもいなかったが、昼間行くと地元のおじさんが所々にいて、営業している。借り賃は1日200バーツ。雨季なのでほとんど客はいないのだが)波打ち際の歩きやすいところを砂浜を踏みしめながら、私たちの泊まっているホテルの別棟前をすぎて、さらに岩場の岬まで。岩場の海辺あたりはどうやらカフェかなんかのお店らしいのだが、休業中のようである。ま、雨季だから…。
そうなんです、プーケットは今、雨季なんです。実は、プーケットだけじゃなくタイの東海岸は春が終わると雨季に入り、プーケット地方は閑散期。にぎわいのベスト・シーズンは冬。もっとも雨季と言っても毎日雨がじゃんじゃか降り続いているわけでなく、降り出すとザーッと強く来るが長時間降り続くことはない、らしい。日本の梅雨もよく考えてみると、他のシーズンより若干雨が多い程度で、雨が降っていない日の方が多いくらい。ただ、スカーッと晴れ渡った日は確かに少ない。タイの雨季もそういう感じらしい。
ところが、日本の梅雨と決定的に違うのは、タイの雨季は海が荒れること。で、きれいな海を目の前にしてダイビングなどの水遊びができなくなる。これはまずいです。だから、このシーズン、プーケット周辺の東海岸のリゾートはガラガラになるらしい。
でも私たちはガラガラを狙ってやってきました。女性2人は海で潜ったり、海の波と戯れるのが苦手、さらにものの15分もボートに乗るとすぐに乗り物酔いするという何とも不幸な体質の人もいて、全員が楽しめる旅にしよう、ということで今回はマリン・レジャーはお預け。「海辺のリゾートでのんびり。泳ぐなら浮き輪に乗ってプールでプカプカ。うまくいったら夕日は見たい。あとお買い物も少し」という今回の私たちのリクエストには、雨季のプーケットはかなりいい線いってます。
南の岩場からは、北へ向かって軽くジョギング。チョット汗ばんできて、体が活動し始めた感じが伝わってくる。でも今日はグータラの日なので、折り返して半分ほど走ったところでホテルの敷地内に戻る。
まだプールには水着姿の人影はない。その代わり、従業員がヤシの木に長い梯子をかけて、葉の剪定をしたり、プールの底に沈んだゴミ掃除をやっている。おっちゃんやお兄さんがゆったりと「サワディー・クラッ」と声をかけてくれる。のんびりした朝だ。しかし、同じ朝の挨拶でも、女の人の少し鼻にかかったような「サワディー・カ~」のおっとりした方が断然いい感じだなあ。
ロビー近くまで戻ってくると、周辺の道に白い花がいっぱい落ちていた。十文字の白い花に白いオシベがたくさん集まったような大きな花。見上げると巨大な木に、かろうじて1つ、2つほどの花が残っている。写真を撮ったりしていると、「サワディー・カ~」声とともに、あっと言う間に路上の花はきれに片づけられた。昼間は緑の葉ばかり目につく木だが、あくる朝も散歩に出ると、白い花が絨毯の模様のように落ちていたのに、「サワディー・カ~」の声とともに、何事もなかったかのように片付けられた。どうやら早起き鳥だけが、毎朝、この美しい光景を目に出来るようだ。
(後でネット等で調べてみました。「さがりばな」科の花に似ているようですが、よくわかりません)
部屋に戻ると、さすがに相棒はベッドから出て、化粧室で朝のご準備中でした。昨夜、手付かずのまま冷蔵庫に入れておいたフルーツを取り出して、ミニバナナを一口。バルコニーに出て本を読んだり時間をつぶしているとようやく朝食タイム。う~ん、さすがに、食欲全開だ。
チーズと野菜をオープンサンド風にしてペロリ、チョコとイチゴとホイップクリームをたっぷりかけたワッフル、どっさりフルーツ(パイナップル、スイカ、ランブータン、パパイア、ドラゴンフルーツその他)その間にジュースや甘いパンも一口、おっとオムレツもいただかなくちゃ。いつもの3倍ほどもいただいたが、ゆったり時間をかけていただいたせいか、みんなスルリスルリとうまく体の隅々にまで行き渡っていった感じ。
まず ホテルのプールめぐり。敷地の南側にあった砂浜沿いのプールは海との一体感がなかなかよかったが、結局は部屋から一番近いプールが一番だね、ということに落ち着いた。周囲の空間がゆったりしていて、プールもほどよい大きさでサイドバーが付いている。ランチタイムまで、ここのデッキチェアで本を読んだり、プールに入ったり、グータラすごす。雲間から時折太陽が顔を出す、ほどよいいい天気。
やっと念願だったトゥクトゥクに乗ってカタ・ビーチの町まで出かけた。乗り込むと軽バンの運転席から後ろ全部のスペースに、向かえ合わせにシートが2本だから、見た目以上に足回りが広々。それでいてドアも窓もない開放感は最高。車内は照明器具やスピーカー、テレビモニターなどがはめ込まれ、ちょっとヤンキー風?にデコレーションされている。でも、シートベルトも、ドアもないから、走りだすとどこかにしっかりつかまってないと、大変。振り落とされそうだ。そのやんちゃな感じがいいんですね。ものの5分ほどで、カタ・ビーチ着。本日も200バーツなり。
「この小道あたりを入った先のビーチ際の岩場に、何軒かレストランがあるはず」と適当に見当をつけて小道を入り込むと、道がなくなってレストランに突き当たった。不審な顔で辺りを見回していると、そのあたりの店の人が、ジェスチャーでレストランを突き抜けろと示してくれる。
確かにレストランの人に何も言われず、ずかずか歩いて抜けると、ビーチに出た。おや、まあ。レストランが道を占拠しているのか、それとも店内通り抜けを黙認してくれているのか、不明だが、この「公」と「私」があいまいで、まあまあいいんじゃないの、という感じのアジアっぽさが私好みです。
砂浜におりて見回すと岩場の傾斜地を利用して何軒かレストランが固っている。海辺から水着に軽く羽織ってそのまま食事ができる店。そのうちの一軒の店の名前「Mama Kata」に覚えがあったので入ってみた。チャーハン、焼きそば、ビザに瓶ビールという軽食をいただいたが、土地柄、シーフードがウリの店らしく、メニューには「ロブスター」もある。値段を見ると時価。やっぱりね、そりゃそうでしょう。冷やかし半分に聞いてみたら「0」が3つ付くとのこと。う~んこんなところで、ちょっと高いんじゃないの。昼食代金はビール込で580バーツ。
浜を歩いて、町役場前のソーテン乗り場(乗り合いバス。行き先が限定され、頻繁に運行されていないので今回はお世話になる機会がなかった)を抜けて町一番のにぎわいを見せるカタ・ビーチ・リゾート&スパの角でカタ・ロードを北へ。
ここからカタ・ロード右手には、道路沿いやそこから入り込んだ小道あたりにレストランやタイ式マッサージ、お土産屋、両替屋などが密集、トゥクトゥクもいっぱいたむろしている。(左手は地中海クラブの敷地が占めていて塀が続くだけ)
50mほど行ったところで、Tシャツや何やかや、タイっぽいデザイン、カラーのお安い衣類を並べる小さな店が何十件と集まった一角に入り込んでみる。どうやらインド人街。息子が「Cheang」とタイ・ビールのロゴが入ったTシャツを100バーツなりで購入。お店にはユニークなマネキンが置いてあったりして、店を冷かして歩いているだけでもそれなりに楽しめる。
トゥクトゥクでホテルへ戻り、サンセットまでホテルでまたグータラする。日が沈むのが午後6時半ごろなので、遅くても6時ごろには高台にあるお目当てのお店についておきたい。ホテルからトゥクトゥクに乗りさえすれば5分ほどでついてしまう距離なので5時半過ぎに集合すればいいだろうというメドである。
それまで特にすることもない。女子連中もプールにやってきて、水遊びしたり。私は日本から持ってきた「草原の風」(宮城谷昌光)と「もっと遠く!」「もっと広く!」(開高健)をとっかえひっかえ、あっちを読んだりこっちを読んだりしながら、熱くなるとプールに入ってしばらくゆったり泳ぎ…を繰り返している。
元来がせっかちで、せいぜい10分か、20分もジーッとしいると、落ち着かなくなる性分。特に旅に出ると、あれも見たいこれも見たいで、地図を片手に電車や路線バスを乗り継ぎ、朝から晩まで歩き回ってきた。ま、一言で言えば貧乏性、欲張った旅ばかりしてきたので、グータラ旅行なんて大丈夫だろうかと思っていたが、結構グータラも楽しめている。ま、年のせいもあるのでしょうね。
5時半過ぎにロビーへ。お目当てのバー「After Beach Bar」をトゥクトゥクの運転手に告げると、200バーツだといい、向かえにも来てくれるという。バーはホテル裏の高台にあるので、距離はたいしたことはないがかなりの急な坂だ。帰りのタクシーは店で呼んでもらうことも想定していたのでありがたい。でも、帰りはホテルじゃなく、カタ・ビーチの町にしてほしいと念を押す。バーではお酒のみ、夕食は別の店でいただきたい。これで交渉終了。
高台まで一気にやってくると、同じような店が3軒もならんでいた。サンセット見るならここ、の人気スポットなのだ。どの店でもよかったのだが、やはり真ん中の一番古い店「After Beach Bar」にする。
先客は2、3組。皆んなテラスの一番はじ、サンセットのかぶりつき席に陣取っている。この店だけでもかぶりつき席は軽く10テーブルはある。私たちは北はじのコーナーのテーブルにした。飲み物はカクテルです、こういう所に来ると。メニューを見てもよく分からないが、プーケットパラダイスとか、いかにもそれらしい名前のカクテルが並んでいる。適当に注文して、さて、見回す。
確かにこれはいい。超ワイドで広がる目の下のカタノイ・ビーチの向こうに、アンダマン海の水平線。空には雲があるが、暮れ始めた青空も広がっている。水平線の雲は積乱雲、その水平線に微かな白い突起物があるような…ジーッと見つめていると、停まっているように見えた微かな突起物は、ほんのわずかだけ左から右へ動いたみたい。船だよ、船。わずかだけど、着実に動いている。
さて、サンセットの情景は、百聞一見にしかず。写真を見ていただくとして、沈んでいく夕日がサーチライトのように雲をオレンジ色に照らす光景は、感動ものでした。でも、夕日って、水平線に沈む前の空の青とオレンジ色の変化も華麗だが、沈んだ後の闇に包まれ切ってしまうまでのわずかな、濃い赤の余韻がいいかもしれない。名残の夕日の赤が闇につつまれ始めた暗い海原に、ポツリポツリと漁船のものとおぼしい小さな灯りが浮かんでいる眺めもいいものでした。
気がつくとトップリと日も暮れ、カクテルもすっかり水っぽくなっていた。午後7時をずいぶん回っている。ここでの会計は4人で1200バーツなり。飲み物は3人がカクテル、1人がビール。おつまみにポテトフライト、カニ入りのタイ風サラダ。
店を出ると、すでにトゥクトゥクが待っててくれた。本日の夕食は、昼間散歩にきた時に店の場所は確認しておいたカタビーチの「Sugar and Spice」というお店。店のある小道(Soi)の近くで停めてもらって200バーツなり。ホテルからバーまでの200バーツと合わせて一緒に払う。タクシーの値段はカタ・ビーチ内なら一律200バーツということらしい。日本円にすると600円強だから日本のタクシーと変わらない。しかしレストランで瓶ビール60~80バーツという物価からみるとかなりお高い乗り物ではある。
やってきたレストラン、ビルの一階にある昨日よりおしゃれな作りだが、ここも窓枠もドアもないオープンな店構えで涼はファンだけ。したがって暑い。トムヤンクンやエビ炒めなどタイ料理をメーンにポークスペアリブや、ピザに中華の春巻が加わり、ビール1人2、3本で汗をかきながらまずまず満足…で1300バーツ。
旅行では、どこで何を食べるかは、重要な部分を占めていることが多いものです。なので、今回もそれなりに下調べをしました。ところが、ガイドブックやネットの情報はプーケットといえばパトン・ビーチが中心で、その他地区はぐっと情報量が少なかったのです。そんな中でネットの「トリップ・アダバイザー」は店の数、情報の更新頻度とも飛び抜けていました。
初日に選んだ「The Kitchen」も今日の「Sugar and Spice」も「トリップ・アダバイザー」では評価の高い店でした。しかし、この2店とも私の想像・期待より、地元タイ料理のクオリティーがやや低いかったような気がします。残念ながら。合格ライン、80点に少し足りないかな…という感じ。
トリップアドバイザーの評価はご存じのようにユーザーの投稿で決まります。投稿の数が多いほど評価は安定してきますが、投稿するユーザーの国籍がバラバラで食文化の差がかなりありそうなリゾート観光客だったら、その評価はかなりおおらかなものになっても仕方なさそうです。
美味しいタイ料理を食べたければ、バンコクに行くべしってことでしょう。
レストラン近くに出ていた屋台のタイ風バーベキューや、タイ式マッサージのお店、観光客がたむろしている安いTシャツやビーチサンダルを並べた夜店などを冷やかしたついでに両換店をのぞいたら、両替にはパスポートが必要と言われた。仕方ないね、明日は早いからホテルへ戻ろうか。
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