2013年12月1日日曜日

アメリカ西部の旅
2012年6月7日



朝からツーソン東郊外にあるサワロ国立公園Saguaro National Parkの東地区Rincon Mountain Districtへ。カクタス・フォレスト・ドライブCactus Forest Driveを一周、途中小一時間ほどのサボテンが群生するトレイルを散策し公園内の東屋で早めの昼ご飯。
東から西へツーソンの町を横切り、途中で道に迷いながら西側の公園近くの「オールド・ツーソンOLD TUCSON」へ再挑戦したが、今日もクローズ(夏休みでした)。
公園めぐりはギブアップして、市内のコングレス通りCongress Street とストーン通りStone Avenueに囲まれた旧市街地周辺を回り、アリゾナ大にあるアリゾナ州博物館Arizona State Musiumへ。
明日は朝6時出発で一気に、カリフォルニア州ベンチュラ郡Ventura County のゴールを目指す。


走行距離:99マイル

宿:アリゾナ州 Red Roof Inn Tucson North(連泊)
給油:$30 ツーソン市内のサークルK
夕食:メキシカンのLa Parrilla $28 
入場料: 博物館 $8


 前日の車のトラブルで、気が重い。今日一日、とにかく無事に終えて、何としてもロスにたどり着かねば。メキシコ国境の町めぐりなど、最後の一日を目いっぱい楽しむプランはあったがすべてボツ。穏やかに、慎重に…。
 サワロ国立公園Saguaro National Park東部地区Rincon Mountain Districtはツーソン市街地の南東部にあるので、モーテル前のIna Roadを東へ向かう。公園に1周5、6マイルの Cactus Forest Drive があり、その道路に沿って短いトレイルが2カ所ほどある。そのトレイルを歩いてみたいので、少し早めに出た。ツーソン市街地を南下しながら西から東へ横断することになるので、少し難度が高い。


 スワン・ロードSwan Roadで右折するはずのところを間違えて、しばらく行ってからUターンしたり、バタバタ。公園へ着いたのが9時過ぎ。すでに暑い。


 ビジターセンターから右回りでCactus Forest Driveをゆったり巡ってDesert Ecology Trailのトレイル・ヘッドへ。整備された道に沿ってさまざまなサボテンが葉肉を広げる中をのんびり歩き出す。

 植物は苦手、ましてサボテンなんてチンプンカンプン。それでも大きなうちわのようなやつ、細長くて白い細かなレースを覆ったようなやつ、サワロのような巨大なやつ、棘が付いたきゅうりのようなやつ。乾燥した大地には意外にも結構多彩なサボテンが息づいている。しかし、名物のサワロはあまり見かけない、見かけても大きなのは少ない。


 かつては巨大なサワロが林立していたのだが、このあたりのサワロは1937年と1962年の寒波で甚大な被害を受け、巨大サワロは壊滅状態になったらしい。

 寒波と生態系を解説した案内板には、巨大なサワロが林立していた様子の写真が残されている。

 ベンチのある休憩所まで行って、帰りは雨季には川になる窪みにそった道を出発地点まで戻ってくる。わずか20分あまりのトレイルだったのに「もしここで私が倒れたら…」ふと余計なことが頭をよぎる。暑い夏は汗をかく、という季節感で60年以上生きてきたおじさんが、ジリジリと体幹まで熱が迫ってくるような暑さなのに、一切汗をかかない、サラサラでジリジリの暑さに、心も未体験の反応しているのか。

 ループ状のCactus Forest Driveの北端を過ぎたあたりから、少しずつサワロが増え、大きなサワロも目につきだしたように思う。両手でガッツポーズしてすっくり立った胸のあたり?に、ポッコリ丸い小さなサボテンがくっついている感じはまるで「おっぱい」。


 もっと大きななサワロのてっぺん付近には濃紅色の花が咲き、鳥がその花に止まって花をついばんでいる。昨日も西部地区で見かけた光景。そうそう、サワロの幹にはキツツキなどの鳥が巣を作ったりするらしい。


 熱波が覆うサワロの林に少したたずんでいると、「シーーン、シーーン」というような不思議な音が、サワロの林に静かに響き渡る。そんなに大きな音でもなく、なんだか寂しげ「シーーン、シーーン」しばらく休んで再びに「シーーン、シーーン」しみわたるように「シーーン、シーーン」。


 何回か音の主を探して見渡したが、どうも何の音なのか見当もつかない。やたら聞こえるわけでなく、あっちで「シーーン、シーーン」と聞こえたかと思うと、しばらくして別の方角から「シーーン、シーーン」。

 やっと見つけた。予想もしていなかった意外な「主」の仕業だった。音の出る方向を見ていると尖った棘を付けた木に、何とセミがとまっていた。もう一度、「シーーン、シーーン」確かに体を揺らしていた。

 あのうるさい、しかも団体でにぎやかに鳴いている日本のセミと姿かたちはそっくりなのに、アリゾナのセミはこうも違うものか。


 車で回っている人はあまり見かけないのに、こんなに暑さの中、自転車で坂道を上っている人が結構いる。たいていは一人、感じからするとご近所の人が、朝の散歩代わりに自転車をこいでいるという風。なかなか人気のサイクリング・ロードらしい。
 Cactus Forest Driveのループ道路の東縁を北から南、最南端にあるJavelina Picnic Areaへ。周辺にはループのトレイルもあるので、少し散歩してもいいかなと思っていたが、相棒は窓から照りつける太陽の熱だけで、もうバテバテ。

そんな様子を見て、まだ11時を回ったばかりだが、早めに切り上げて「オールド・ツーソンOLD TUCSON」へ向かうことにして、駐車場そばにある屋根のついた休憩所でいつものサンドイッチ&オレンジジュースの昼食にする。
 この旅で毎日、お世話になったクーラーボックスもこれでお役御免。Grand CanyonやYellowstoneのような人気の公園内でないと、簡易レストランcafeteriaどころか、ジェネラルストアgeneral storeもない。今回のような、結構タイトなスケジュールで移動する必要がある旅では、好きな時に食事ができる有難さが身に染みた。

 事実、あちこちの駐車場や、ピクニックエリアで、クーラーボックスを囲んで食事している人たちに出会った。3週間ほど、ほとんど冷えたオレンジジュースか牛乳に、チーズを挟んだ薄切りパン+ミニトマトのメニューだったが、ほとんど苦にならなかった。それほど毎日が充実していたんだと思う。本当にお世話になりました

 「オールドツーソンOLD TUCSON」のあるサワロ公園西地区へ向かう。東地区と西地区はツーソンの東外れと西外れに位置するので、今度はツーソン市内を東から西へ横断する

 大きな都市と思っていたのに、実際、ツーソン市街地を走ってみる想像以上にゆったりのんびりした町だった。というのも、街のど真ん中を走っているはずなのに、ビルらしいものを見かけない。商業用の建物は平屋かせいぜい2階程度で倉庫のようにばかでかくて、それに広大な駐車場が建物の周囲を取り囲んでいる。商業用施設に混じって広大な庭を持つ個人の家が点在。市街地だから空き地はないが、まるでロス郊外の住宅街のようなのんびりした町並みが街の端から端まで続いている。

 持っていたラフな地図(州単位の地図に付いていた主な都市の市街地地図)によれば22番通り22nd Stで横断し、I-10を過ぎて丘陵地を登ると、公園へ抜ける道があるはずだったのだが、何と、いかにも最近開発されたばかりの高級住宅街に迷い込んでしまった。おしゃれな住宅街をグルグル、同じようなところを何回もを楽しんだが、仕方ない、一度I-10まで戻って、公園内を走る西ゲート・パス通りWest Gate Pass Rdに続く大通りまで迂回。

 やっと西ゲート・パス通りWest Gate Pass Rdへ。公園内のサボテンのまばらな林が続く穏やかな丘陵地をうねるように登り、峠を越えると道路の右手前方に、緩やかに丘陵地の広大な裾野が広がっていた。ほぼ180度の超ワイドでまばらなサワロの林が、丘陵地に沿って穏やかに下りながら延々と続いている。骨の髄から加熱されるような強い太陽の光で、はるか彼方は霞んで定かではないが、数キロにわたってズーッと続くサワロのまばらな林を見下ろすと、いかにも、ツーソンに立っているぞという実感がわいてくる。こんな熱気が覆う雄大な景色、素人監督だってウエスタン映画のワンシーンにでも使いたいぐらいだ。
 キニー通りKinney RdとのT字路で左折するとすぐに「オールド・ツーソンOLD TUCSON」。当然、人っ子一人いませんでした。「えー」思わず絶句。時間はまだ午後1時ごろ。これから一体どうする?車の中で、しばし呆然でした。しかし、事前に調べておいたアリゾナ南部の他の場所は、メキシコとの国境に近い町や公園などで、いずれもかなり離れている。車のアンダーカバーのトラブルを抱えている状況から、万が一のことを考えると遠出は避けたい。
 すると、ツーソンTucson市内ということになるが、選択肢はほとんどない。あわててAAA発行のアリゾナ州のガイドブックを繰ってみる。市内にアリゾナ大University of Arizonaがあり、そこにアリゾナ州博物館Arizona State Musiumがある。ツーソンのダウンタウンを見て、博物館でアリゾナ州のお勉強をすることにした。


 来た時とは逆、西ゲート・パス通りWest Gate Pass Rdを抜け、スピードウエー大通りSpeedway Blvdからストーン通りStone Avで南へ下る。このストーン通りStone Avと南北に走るアラメダ通りAlameda StやコングレスCongress Stが交わる周辺が、ツーソンの町の発祥の地。スペイン人によって拓かれ、1775年にツーソンという町が誕生した当時、要塞の壁に囲まれていた、町のルーツにあたる一角

  鉄道の線路を通すために地下道になった道を抜けると正面にやっと市街地らしい高層ビルが見えだした。

  銀行の看板が見えるビルがあるのがアラメダ通りAlameda Stペニントン通りPennington Stの先が市役所のあるコングレス通りCongress St、さらにブロードウエー大通りBroadway Blvdと、4つほど高いビルが並ぶ通りを通過するとビル街は終わり、クリーム色っぽいレンガ造り、両脇に鐘楼を配した正面ファサードが印象的なメキシカン・ゴシックの聖アゴスティーニ大聖堂St,Augustine Cathdralが右手に見えてくる。これで町の中心街はほぼ見尽くした感じ。

  超スロースピードでキョロキョロ通りを見回しながら2度ほど通ってみるが、周辺はビジネス街で、カフェテラスのような店が並ぶショッピング街のようなところも見当たらない。こりゃ町歩きどころじゃあない。そのまま6th Avで北上し、大学大通りUnivesity Blvdを東へ向かうと突き当り大学University of Arizonaへ。
 
  迷うほどもなく、すぐ左に州博物館が見えてきた。入場料一人5ドルだったが「シニアは割引だけど」受付の品のいいシニアの女性に言われ、「そうなんですよ」。一人4ドル、二人で2ドル分助かった、というより、優しく声をかけてくれる応対に、相棒と二人してちょっといい気分。もちろん、駐車代込み。
  アリゾナ州のネイティブの歴史や文化を中心にした展示物で、特にアパッチ族のジェロニモについての写真などの展示に相棒は痛く感動した様子。白人と戦い、ついには投降、故郷に帰ることは許されず、抑留先で亡くなったジェロニモの一生を知ることができただけで、ここに来たかいがあった、相棒。
  涼しいところでのんびり午後5時の閉館近くまで見て回ってモーテルへ戻ると、前庭にあるプールが大盛況。グラマラスなご婦人が3、4人で盛り上がっている。そうか、そういう手もあったんだよね。でも私たち、水着の準備まではしてこなかった。5月から6月にかけての日本の陽気だと、水着という発想にはなかなかならない。でもアリゾナは確かに「オールド・ツーソン」も夏休みに入るくらいの盛夏だった。
  この日の最後になる、車のアンダーカバーのチェック。緩んでいる様子はまるでない。これなら、少しくらい寄り道して帰ったとしても大丈夫だろう。一時は、最悪の事態として、レンタカー会社のツーソンの営業所へ車を持ち込むことも考えていたが、とにかくベンチュラ郡Ventura County(カリフォルニア)までは帰れそうな感じ。
  私が立てたオリジナル・プランは、明日はもう一カ所、サボテンの公園に立ち寄り、ラッシュ時間をさけて深夜にLA帰りのプランだったが、相棒からは「もう暑くて、サボテンなんていいから早くLAに帰りたい」強い要望。私も車のアンダーカバーのことでは相当不安があるだけに、素直だ。早出の朝6時に出て、夕方のラッシュ前にLAの市街地を抜け、夕食前にたどりつければ最高。
  夕食は、AAAのガイドブックに載っていたちょっとおしゃれなメキシカンへ、車で出かけた。夕食に車で出かけるのは今回の旅では初めて。いい感じの店だったが、残念ながらアルコールが飲めないものだから、つまらない。最後の日ぐらいもう少しリッチな時間を、というプランもなくはなかったが、今回は最後までこの旅のスタイルを貫くことにした。
  アメリカのワイルド・ウエストを朝から晩まで巡り、歩く、ストイックなドライブ旅行。辺鄙な国立公園をできるだけたくさん、だから目いっぱい効率よく回ろうと、朝も昼も自家製サンドイッチ。軽くいっぱいも部屋で缶ビール。

  でも、それが少しも苦にならなかった。毎日が驚きと感動の大自然の連続で、それだけで十二分に充実し切った一日の連続だったからだろう。

  ちょっとハードでストイックな旅にふさわしい、ラスト・ディナーだったかも。
  部屋に戻って、缶ビールをもう一缶。アメリカ西部の公園めぐりドライブの旅、最終日は結構シマラナイ一日だったけどどうやら無事に帰れそうだ。楽しい思い出いっぱいで元気にLAまで帰れるだけで最高かも。さあ、明日はどこにもよらず、ひたすらLAです。

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