2013年10月11日金曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月30日


 いよいよ旅の後半入り。イエローストーンYellowstoneは窓の外に広がる風景も、砂漠ユタ、アリゾナから針葉樹の世界だ。
US20を北へ、ウエスト・イエローストーンWest Yellow Stoneの町を一歩出ると公園の西入口。
公園内のUS20/191/287、マディソン・ジャンクションMadison Junctionで右折しOld Faithful 地区方面へ。途中、温泉が噴き出すFountain Paint Pot、 Midway Geyser Basin、 Biscuit Basinなど温泉活動地帯で車を停め、散策しながらOld Faithful 地区にはお昼すぎに到着。
午後は間欠泉などが集中するOld Faithful 地区を散歩。
宿泊するオールド・フェイスフル・インOld Faithful Innはホテル自体も観光名所の巨大なログ・ホテル。波乱の一夜。

走行距離=145マイル
宿:ワイオミング州Yellowstone/Old Faithfull Inn $112.6
給油:24.85 West Yellowstone の町の20マイルほど手前にあるHenrys Lake Park近くのIsland Park という町、US20沿いにあったChevronのスタンド
夕食: Old Faithfull Inn Dining Room $65(Buffet$26.5二人分) 
買い物:ホテルの土産店で41.31(熊のぬいぐるみやマグネット) 


  アイダホ・フォールズIdaho Fallsから、右手に白い雪を頂く峰を見ながら「あれがイエローストーンかな」ちょっと心躍らせながらUS20をさらに北上する。公園入口までまだ100マイルは軽~くある。まだまだイエローストーンが見えるわけないか。

  それにしても昨日のアリゾナやユタの砂漠地帯から、朝から晩まで時速70マイルあまり(110km以上)で走り詰め。アイダホホールズIdaho Fallsまで、途中寄り道もしたのでざっと700マイル、それだけ移動すれば日本だと本州の西の端・山口県から栃木県か福島県あたりまで行きついてしまう計算。さすがに24時間前に出発したMoabの町とは車窓から見える景色がまるで違う。


  ポテト畑の丘陵地帯や林をいくつも抜けると、正面に白い峰が現れだす。片道2車線だったUS20が片道1車線変わり、左右の針葉樹の林を抜け、いよいよアイダアホ州側にある公園へのゲート・シティー、ウエスト・イエローストーンWest Yellowstoneの町。信号のある市の中心街を左折すると、すぐ目の前に1872年、世界で始めて誕生した国立公園のゲートだ。

  公園に入って2マイルも行くとアイダホ州からワイオミング州へ。モーテルから2時間あまりでイエローストーンの真っただ中だ。今日は熱湯の温泉springや間欠泉geyser、噴き出した温泉を湛えたpoolをめぐりながら南へ下り、規則的に熱湯を何十メートルも吹き上げる間欠泉で知られるOld faithfull泊まり。

 
 マディソン川Madison riverに沿ってWest Entrance Road を走るとさっそく、バイソンBisonの群れに出くわした。緩やかな谷間にゆったりと広がる河原でのんびり草を食むバイソンたち。でかい。穏やかな川の流れに静かに立ち、釣り竿を振り続ける釣り人。そんな情景に思わず車を停め、カメラを手に、しばし景色を味わう。



  Mammoth方面とOld Faithfull方面への分岐点Madison Junctionで右へ。すぐにFirehole Fall方面への脇道Firehole Canyon Road。予定には入れてなかったが、滝への道へ。まだ9時台、車も人もまばら。滝というより、ちょっとした段差のようなFirehole Fall滝を見学。寄らなくてもよかったかな。



  メーン道路のGrand Loop Roadに戻る。Firehole川に沿って続く針葉樹の林の中を抜け、開けた荒れ地に出ると、右手にまたバイソンの群れ。思わず、反射的に脇道のFountain Flat Roadに入ってみる。すると道路上をバイソンがわがもの顔で占拠、そろりそろりと近づいても逃げようともせず、逆に車に近づいてくる。20センチほどの至近距離から見るバイソン、生え変わり始めた暖かそうな毛に包まれボディーはちょっと汚らしいが、表情が何とも可愛い。生まれて間もない?まだまだ弱々しいチビのバイソンもいる。こんなにも間近に野生のバイソンを見ることができるなんて、ラッキー!

  再びGrand Loop Road。道路脇はすっかり針葉樹がなくなり開けている。どうやら温泉活動が活発な地帯に踏み入れたようだ。駐車場のあるビューポイントが見えてきた。温泉の湯気がモヤモヤ噴き出している。車を停めて標識を見るとFountain Paint Pot とある。さあ、温泉地帯へやって来たぞ。


  外は思いのほか寒い。長そでシャツにコットンのセーター、その上からウィンド・ブレーカーといういでたちで、蒸気を噴き出す温泉や温泉プールを巡るトレイルへ繰り出す。鮮やかなブルーの温泉を湛えた巨大な湯気の出る「水たまり」のCelestin Pool 









  少しずつ流れ出した温泉が、濃淡さまざまな茶色の微妙なバリエーションを見せながら、ヒタヒタと地面を覆うように流れていくBacteria Mat の先には、グツグツ地下から噴き出した温泉が泥といっしょになって噴出している Fountain Paint Pot や小さな噴気孔から蒸気を噴き上げているFountain Geyserなど。
  整備された木製のデッキを散策。日本ならさしずめ地獄巡り。別府や雲仙での体験を思い出す。そうそう違うのは、こちらは硫黄の臭いがほとんどしないなあ。
  いよいよ温泉活動地帯の真っただ中へ。すぐに現れたのがMidway Geyser Basin

  Firehole川に湯気を立てた温泉が勢いよく流れ込んでいる。ちょっとしたマウンドを上がると、緩やかな傾斜に幾重にもほんのわずかな段とそれに堰き止められた浅い小さなプールを無数に作りながらヒタヒタとあふれ、流れ落ちていく斜面や、神秘的なコバルトブルーの温泉をたっぷりたたえた巨大な温泉の池が続く。標識にTurquoke Pool Opal Poolとある。


  Grand Prismatic Springまでいく。   直径120mあまりもあるYellowstoneでも最もでかい温泉をたたえたブルーの池。

   エメラルド・ブルーEmerald Poolの温泉を湛えたプールの縁は、プールから広く溢れ出た温泉で薄く覆い尽くされ、そこが高熱性細菌の働きで薄茶色や濃い茶色が網目のように広がっている。さらにそのところどころで、赤っぽいオレンジ色や白っぽいオレンジ色の帯が太く細くうねる、ちょっと不思議な模様を造り出している。





  そんな茶色やオレンジなどの色彩をにあふれた池の縁を貫いて木製デッキの遊歩道が続く。



  鮮やかなブルーの温泉が大きな深い池になったExcelsior Geyser Craterなどからあふれ出た温泉は、やがてCraterのすぐそばを流れるFirehole川へと、もくもくと湯気を上げながら次々と流れ落ちている。



  ここから少し戻って、Fountain Paint Potの南東にある間欠泉Great Fountain Geyser に寄ってみる。

  ここはGrand Loop Roadから一方通行のFirehole Lake Driveで入り込んだところにある。

  途中、ブルーの温泉をたたえた深いプールとその周りに茶色やオレンジを配した、白の浅瀬が包み込む。温泉が作る色彩の光景に、枯れて立ち尽くす針葉樹やまだかろうじて葉を付けている木が不思議なアクセントを添える。木が残っているのは、この周囲の火山活動が始まって時間が経っていない証拠だろう。

  Sapphire Pool など、小粒で個性的な温泉が集まったBiscuit Basin

  駐車場からFirehole川を渡るとSapphire Pool、透き通った青とはこのことを言うのだろう。少し先には塩のような白さに囲まれた中で少し緑色がかった青のspring。

  柔らかな貝のような噴気孔のShell Geyser やJewel Geyserなどが並ぶ。



  ここからFirehole川にそってOld Faithfullまで、盛んに温泉の噴気を上げているgeyserを訪ね歩く3km余りのTrailや自転車道も始まっている。


  次に寄ったBlack Sand Basin。林が迫る平地に沿ってIron Spring Creekが流れる。

  大きく穏やかなSunset Lake、 Rainbow Pool 、Emerald Poolと、名前からも想像がつきそうな白、青、オレンジ…様々な鮮やかな色彩にあふれた、もくもく湯気を立てた池が広がる。

  川に流れ落ちる温泉、Emerald Poolに立ち尽くす無数の枯れ木。この日訪ね歩いた温泉群でもMidway Geyser Basin に並ぶ印象深い温泉群だ。





  ここまでで午前の部終了。後はいよいよ本日のメーンイベント、Old Faithfullとその周辺のgeyser群。

  一歩通行の道をグルリと回り込み、Snow Lodgeの前を抜けて建物群の一番左奥まで進むと壮大なログハウスのOld Faithfull Inn。その右手にビジターセンターのビルがある。


  周辺は広大な駐車場。どこに名物のgeyserはあるのだろう?ビジターセンター付近に車を停めてセンターを訪ねると、何とビルの裏側(表側?)が広大な広場になっていて扇形にベンチが延々と並び、その中央で湯気を上げていた。






    ベンチにはすでにたくさんの人が待ち構えている。ビジターセンターには、直近に噴き上げる3カ所ほどのgeyserの噴き上げ予定時間が表示されている。Old Faithfullは後10分ほど。
    さっそく私たちもベンチに座って待つことにする。噴気孔からしばらく低い噴気が勢いよく上がっていたかと思うと、一気に30数mほど噴き上げてきた。どよめきが走る。写真で見た通りに豪快な蒸気の噴気。違うのは、噴き上げるその音、観客の弾んだ声、それに風下にいる人たちが逃げ惑う華やかな混乱。その興奮の噴気ショーも5分あまりで終わり、あっという間に観客が散って元の静けさに戻る。
    約90分ごと、誠実(Faithfull)なほど規則的に昔からずっと(Old)、見る人がいない、真っ暗な夜中も休むことなく、この活動が続いているのだそうだ。


    このOld Faithfullから北東にかけ、Firehole川に沿って約2kmあまり、間欠泉が集中している。ビジターセンターから見ると、ちょうどOld Faithfull後ろ側が間欠泉群に当たる。


    数時間おき、数年ごとなど、さまざまな噴気パターンの間欠泉があるのに、ビジターセンターの噴き上げ予定時間を見ると、運悪く2カ所も5時からの夕食の予約タイムとダブってる。なんてこったい。気ままな個人旅行は時間の使い方は難しい。



    仕方ないので、ビジターセンターにある本日のもう一つの目玉、本日の宿へ行ってみることにする。20世紀に入ってすぐに建てられ、すでに100年以上たつ、一目でそれとわかる壮大な丸太造りの建物。チェックインできるようなら済ませておくつもりで、ホテルまで行ってみて分かったのだが、車を停めたのはホテルの裏手側。正面玄関へは、一方通行の道をGrand Loop Road 方面へ少し戻って、途中で右折する。
    グルリと車を回してみる。なるほど、左のFirehole川に沿って蒸気を噴き上げるgeyser 群を遠景に、正面にOld Faithfull Geyser 、その右手には高々と組み上げた丸太がずしりと迫るOld Faithfull Inn、高さは5階か6階程度の建物なのに、そびえるように立っている。

    正面は2階部分の屋根には三角形の小窓が5つ、3階部分にも小さな小窓が付いた壮大な屋根。その下に平入りの正面玄関、ひときわ太い丸太を井桁に組んで、しっかりと重量を支える支柱が目を引く。玄関上にはテラスが見える。




    内部のロビーもむき出しの丸太、骨組みも力強い吹き抜けも一見の価値あり。4階あたりまで自然石を積み上げた暖炉もすごい。2階部分は周囲がグルリと回廊式のロビー、エントランスの上はバーコーナーで外のテラスにもつながり、テラスからgeyserを眺めることができる

   3階にもちょっとしたスペースがある。それらをつなぐ階段を含めてすべてが丸太のログ。正面入り口の反対側、暖炉の裏手がレストラン。そして客室は中央のロビー部分から両脇に伸びた2階建ての部分。





   3時前のホテルロビーはまだのんびり。チェックイン客もほとんどいない。とりあえず部屋へ。案内された部屋は一階玄関脇の一隅にある部屋。3、4ヶ月ほど前のインターネット予約でベッド2つの部屋が取れず、残っていたのが普通のダブル。この旅行では唯一のワンベッドでシャワー・トイレは共同。セミダブル程度のベッドと洗面台がある程度。

   「アンクル・トムのキャビンみたい。可愛いわね」とgeyserの噴気が望める窓辺の椅子に座ってご機嫌だった相棒。でも最初から覚悟していたとはいえ、これはちょっと狭い。




   前にも触れたようにイエローストーンは私たちにとって今回の2大テーマ。なのでイエローストーン公園内と隣接するGrand Titon と合わせて4泊もする超ゆったりプランを立てている。

   さらにここだけはホテルにもこだわり。このOld Faithfull Inn ではこの旅で唯一レストランの予約まで入れていた。ただし、7時の予約はいっぱいで5時の予約。ちょっと中途半端だが、これも今回の旅で初めての試み。


    夕食時間まで少し時間があるので、ホテル内を散策してみる。お土産の売店に立ち寄ったり、ロビー2階の椅子に座ってぼんやり、ログ造りのロビーの様子を撮ったり。


   Old Faithfull の噴き上げを今度は2階のテラスに出て眺めることもできた。2階の木製のゆったりした椅子に腰かけ、暖炉や1階ロビーのにぎわいを見下ろし、ぼんやりと時間を過ごすのはちょっとリッチな時間。こういう旅の楽しみもいい。

    部屋に戻ったころには、ほかの部屋の人の出入りが始まり出していた。隣が共同のショワ―ルームだったので、「混み合う前にシャワーにするわ」とお湯を浴びて出てくると「この部屋ちょっとうるさい」と相棒の様子がちょっと不穏。確かに階段を上り下りする足音が響く。「どこかの部屋で水を使うと給排水の音もすごく響くし」確かに。


    でも、持参の缶ビールで少しいい気分になってきて、ちょっと機嫌を直して夕食へ出陣。

    ダイニング・ルームももちろん、重厚なログ・キャビンのつくり。この雰囲気もお味のうち。メニューはおススメの「Sigunature Dinning Buffet」。日本でいうバイキングだが、お替り何回でもやり放題、というわけにはいかないちょっとオスマシなやつ。メーンのプライム・リブを含め、なかなかのお味。


    優雅に満足の食事タイム。本日も食事中のアルコールはなしだったが、やっぱり私たち二人には少し物足りない。でも、ビールを飲みすぎるとしばらく何にもしたくなくなる。旅に出るとそのあたりの兼ね合いが工夫のしどころ。

    夕食が終わったのが6時前。まだまだ日も高いのでホテル近くのGeyser群をゆったり散歩してみる。

    まず、Firehole川を渡ってGeyser Hillへ。Old Faithfull Innの存在感のある建物を遠くに眺めながら、あちこちから蒸気を噴き出す丘に敷設されたボード・デッキをのんびり歩く。すると、丘の南、Firehole川のそばで10m、20m、蒸気が吹き上がった。

    Old Faithfull Innをバックに噴き上げる間欠泉に思わずシャッター。


    川に沿って下流に向かうと独特の神秘的な青い温泉をたたえたPool、周辺が温泉の成分で赤茶色のクレーターのようになったPoolやSpring、断続的に噴気を上げる小さなgeyserや見物客用にベンチが用意された「著名」なgeyserも次々と遊歩道に沿って現れる。

    PoolやSpringは昼間たくさん見てきたが、このOld Faithfull Geyser 周辺は何と言ったって、常にモクモクと勢いよく噴気を上げているGeyser 間欠泉の存在がまるで違う景色を作っている。

    いつ爆発するかもしれない、地面の下に潜んでいる巨大なエネルギー高まりを、リアルタイムで感じられる、ワクワク感のようなものだ。

    Grand GeyserGiant GeyserGrotto Geyserまで歩き、空も暗くなってきたのでホテルへ戻る。



    灯りのともったロビーも暖かい落ち着きがあって、なるほど素晴らしい。でも、パブリック部分はゆったりくつろぎの空間だが、一歩プライベート空間に入ると、確かに荒削りでウッディ―な内装、薄暗い照明が雰囲気をだしているが…ギシギシ、バタバタ、キュルルルー。あちこちからさまざまな音が響いてくる。ギシギシ、バタバタは階段や部屋を歩き回る足音の軋み。キュルルルーは水道・下水の流れる音。悪いことに私たちの部屋の隣がシャワー・ルーム。この周囲の生活音(話し声、足音、ベッドやドアのきしみ、水道の流れる音などなど)がとにかくうるさい。9時前、私はセミダブルサイズのベッドにもぐりこんだが相棒は「こんなところで寝られない」と言って、とうとう部屋を出て行ってしまった。
    私はベッドの片隅で呑気に眠りに。ところが1時過ぎに目を覚ますと相棒はまだ戻っていない。部屋は、さすがにこの時間になると静けさに包まれている。心配になって、ロビーの2階や3階、別棟のロビーなどあちこち探しまわるが、どうしたことか…姿が見えない。ちょっと焦ってきて、とりあえず一度部屋戻ろうと小走りで歩いていると、廊下の先からひょっこり相棒が顔を出した。

  ズーッと部屋から近い別棟のロビーで絵葉書を書いたりしていたが、そろそろ寝なくちゃと思いトイレに入っている間に、私が部屋を出たようで、すっかり行き違い。また、新しい「思い出」を作ってしまったみたいだ。
     安心して、ベッド壁際に身体を寄せ小さくなって、すぐにzzzzzzzz。




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