2013年9月30日月曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月26日
                          
本日はキャピタル・リーフ国立公園の一日。
トロピックのホテルを出てまず立ち寄ったのが、小さな隣町Cannonvile。UT12を外れ、その名もココダクロム・ウェイKodachrome Way をコダクロム・ベイスン
州立公園Kodachrome Basen State Park まで、ちょっと寄り道。
再びUT12に戻ってグランド・ステアケース=エスカレンテ国定公園内を走る。エスカレンテの町を過ぎ、ちょっと不思議な高地を走るころから空が黒い雲に覆われ雨模様。9200フィートLion Mountainの峠越えでは頂上付近でちょっと吹雪にも遭遇だ。
一気に山を下ると天気も回復。Torreyの外れでUT24に合流。東へ少し行き公園着。キャンプサイトでサンドイッチの昼食を済ませ後は日暮れまで公園内をドライブ&ハイキング。GorgeやWashと名付けられた、雨が降ったときに川になる“道”を通ってトレイル・ヘッドまでドライブ。そこで車を置いて川の道をしばしハイキング、川床から見上げる谷はいつもと違う風景、ラフティングの気分ってこんな感じかな?
大段丘が造り出すスケールのでかい、手つかずの自然に大満足。

今夜の宿は壮大な断崖を望める、公園に隣接したモーテル。
                     


走行距離=260マイル


宿:ユタ州Torrey (Howard Johnson $109.15)

給油:$33.70=Tropic Clarke's Country Market 

夕食:Howard Johnson そばのLa Cueva $30

買い物:食料品など$10.36、切手$8.4 

入場料:Kodachrom Basin state park $6


  今回の国立公園ドライブ・ツアーはかつて西部劇の舞台だったような辺鄙なところばかりを回っている。でもモーテルがあるような町なら、食べる所はあるだろうと、何となく高をくくっていた。が、実際は、町なんかはなく、モーテルがポツンとあるだけという所もある。でも、そういうところでは、モーテルに隣接してガス・ステーション、レストラン、ゼネラル・ストアが「3点セット」で並んでいる。ぜいたくさえ言わなければ、食事から買い物まで、たいていのことはモーテル周辺だけで完結する。


  出発前、夕食でお世話になったレストランに隣接するガス・スタンドでガソリンの方も23日以来の給油を済ませて、出発。



  ホテルの前の道をブライス・キャニオンとは逆方向、東へとUT12を進み、次の町CannonvilleでUT12を外れてコダクローム・ベイスン州立公園Kodachrome Basen state parkへ立ち寄る。


  入場料1人3ドルなり。まだ朝が早いうえに、空には雲がかかったあいにくの空模様。公園内のキャンプ場で一泊した人たちはやっと起き出したばかりだった。







  コダクローム・ベイスン州立公園は、かつて“コダ・カラー”で世界中を席巻したカメラ・フィルム・メーカー、コダックのカラー・フィルムの商品名にちなんだ名前。赤い岩や白い岩が作り出す色鮮やかな塔・石柱などの自然の造形美が自慢の公園なのだそうだ。









  しかし煙突のような塔チムニー・ロックChimney Rockや、立ち尽くす男性像のような石柱など、せっかくの名所も、赤や白の岩に鮮やかな色彩を与えてくれる太陽が厚い雲の向こうでは、どんよりくすんで、寒々。実際、気温もバミューダ・パンツでは寒くて長居出来ないほど。

  コンパクトな空間に、30分~1時間程度のほどよい長さのトレイルが何コースかあり、天候さえよければ2時間ほど、カラフルな岩山の散策楽しめればよかったのだが、時間とタイミングが悪かったみたいだ。



  早々に切り上げ、途中、来るときに見つけておいたCannonvilleの町の郵便局post officeに立ち寄る。町の集会場のような施設も兼ねた四角い2階建ての1階がpost office。相棒は絵葉書用の切手1.05ドルを8枚買い、投函する。この旅に出て初めての絵ハガキ。スタートして1週間、やっといろいろな余裕も出てきた。

  それにしても、郵便局があるくらいなのだから、郵便局が面しているこの100-200メートルほどの通りが町の「中心街」なのだろうが、家はまばらに10軒程度、周辺には人っ子一人いない。郵便局の建物も、ドアが開いているのかどうかもよく分からず、実際入ってみて初めて、おばあさんが窓口にいたので営業中と分かるほど。静まりかえったアメリカの小さな田舎町。

  UT12に戻ってTorreyを目指す。

  
  道はEscalanteの町を過ぎEscalante CanyonをへてBoulderという小さな集落へと続く。コダクローム・ベイスン州立公園からずっとどんよりとした曇り空、少し雨も混ざり始めた。ズーッと青空に恵まれていた今回の旅行で初めての雨。そんな雨模様の中、Grand Staircase-Escalante National Monumentの一部で、最後のフロンティアと呼ばれる荒涼とした岩の台地を車は走っている。




  事実、このあたりはアメリカ地図で最後まで残されていた空白地帯だったらしい。1872年にパウエル湖でおなじみのジョン・ウエスリー・パウエルが2度目の探検でその様子をリポートして初めて、このあたりのことがアメリカ国内でもようやく知られるようになった。


  ちなみに第1回目の探検でパウエルがアメリカ中にその存在を広く知らせたのが、コロラド付近のグリーンリバーからコロラドリバーを下ったグランド・キャニオン周辺。




  パウエルが2回の探検で踏査した広大な地域が、まさに私たちが21日からドライブしている地域ということになる。


  それだけに、この地域の自然はまだまだほとんど手付かずで残されたところが多い。その代表がGrand Staircase-Escalante National Monument。ブライス・キャニオンBryce Canyon やキャピタル・リーフCapital Reef から パウエル湖Lake Powell、グレン・キャニオンGlen Canyonに及ぶ、広大なエリアがNational Monumentに指定されているが、National Monumentなのに、そこを管理しているのは、国立公園やNational Monument、National Historic Siteなどを管理しているUS National Park Service(NPS)という組織ではなくBureau of Land Management(BLM)という別組織、という特別な「公園」。

  Escalanteの町から南、コロラド川まで続くBLM200 Hole In the Rock Roadの未舗装道周辺、「The Wave」として知られるようななったUS89周辺など、未開発のすばらしい自然が残っているらしい。




  Escalanteの町を出て10マイルあまり、道は一気に高度を上げ、ちょっと高地を走る。360度見渡す限り緩やかに波打つ滑らかな白っぽい岩が続く高原。UT12は、まばらに樹木がはえた、穏やかに波打つような地形に沿って、はうようにくねくねと曲がりながら上り・下りして、白い岩とまばらな樹木が作る地平線の向こうに消えている。そんな道が数ヤードあまり続いて、やっとアメリカで見慣れた赤茶色をした奇妙な岩の柱や岩の塊のある風景が現れる。

  日本ではまず見たことがない、という荒野ばかりをこの1週間走っているが、それでもちょっと奇妙な感じのちょっと印象的な道。


  おまけに、こんな荒野のど真ん中にコーヒーハウス「Koffeehouse」までが現れちょっとびっくり。

  曇り空のU12、珍しくViewpoint が(Calf Creek Viewpoint)があったので、車を停めてみる。谷を見下ろすポイントだったが、目が肥えてきた?私たちには「ふーん、こんなものなの?」荒野から少しずつ緑が増え、久々に緑豊かなBoulderの集落。少しほっとする。


 
 集落を抜け再び山道、高度が上がる。それにともない空がどんどん怪しくなってきた。


  何と雨は雪へ。9200フィートのLion  Mountainの峠越えでは頂上付近でちょっと吹雪にまで遭遇してしまった。頂上付近は道路の両脇が白く積雪するほど。





  一気に山道を下り切るとTorreyの町。下るにしたがって、青い空が広がっていく。同じような荒野をドライブしているようだが、日本でいえば国境にある峠のようなところだったのだろうか。


   町の郊外にあるT字路、目の前を左右に走るのがUT24。左へ行けばTorreyの町の中心。右へ行くとキャピタル・リーフCapital Reef。町の郊外、T字路周辺は緑が多かったが、すぐに、荒地に。

   すると左手に今日の宿ハワード・ジョンソンHoward Johnsonとガス・ステーションが見えてきた。その先にもガス・ステーションやレストラン、モーテルらしい建物が見え、前方には赤茶色の岩だらけの断崖がはるか彼方まで続くダイナミックな景観が迫ってきた。




   絶景を背景にしたモーテルから数分も行くと公園の敷地内。赤い石柱のChimney RockとPaorama Pointが道路を挟んで待ち構えている。Panorama Pointの駐車場近くの展望台に立つと、赤茶けた岩や薄い青みや緑青がかった岩の層が彩りを添える断崖が遥か彼方、地平線まで営々と続いていた。



   断崖は100mほどの高さはあるのだろうか。押し寄せる津波が凍りついたような、巨大な地殻の褶曲・しわの断面が見せる断崖は、赤や赤茶色、さらに青みがかかった灰色の層が、巨大な砦か、難攻不落の懸崖の城のように連なり、豊かな色彩や造形で彩られた壮大な壁となって、澄み切った青い空の彼方まで見通せる透明さの中、見える限り続いている。10マイルや20マイルなんてものじゃない、少なくとも数十マイルは続いていそうだ。





   つい3時間ほど前までいたブライス・キャニオンが繊細な岩の芸術なら、キャピタル・リーフの醍醐味は荒削り・手つかずの自然の頑強な美しさ、だろうか。


  ドライブが始まって1週間、LAから移動の初日を除けば、毎日のように、アリゾナ州北部からユタ州南部にかけて広がるコロンビア・プラトーと名付けられた高地に展開する、乾燥し切った岩だらけ、荒地だらけの荒野を走っているのに、岩が造り出す景色はどれも同じものがない。今日もまた、絶景に息を飲む。



   駐車場わきから続く未舗装道路の先にはGoosenecks OverlookとSunset Pointのビューポイントもある。中国人団体らしい大型バスが到着したので、未舗装道をたどってさらに先にあるビューポイントへ移動する。

   メキシカン・ハットの近くにもGoosenecksがあったが、ここもΩのように川が大きく湾曲したポイント。川の縁に立つと、目の下の川の地形や地層と、遠く連なる断崖のスケール感が、この土地の厳しいまでの荒涼感をさらに際立たせている。小さな駐車スペースがあり、左方向にはSunset Pointの標識がある、夕日のポイントならもう一度出直してみるか…。



 サルファ―川Sulphur Creekに沿って続くUS24を東へ少し行くと、緑の樹木が茂る谷に入る。道が右に分かれる分岐点に公園のビジターセンターなどの施設がある。

  今夜泊まるハワード・ジョンソンからも10分足らずの場所。そのままUS24を東へ少し先へ行くと、19世紀にモルモン教徒が始めた果樹園や学校跡もある緑の楽園のような静かなスポットFruita。周囲を覆う岩と砂の世界とは別天地のオアシスだ。

  まるで巨大な西洋の城砦のような「The Castle」が背後にそびえるビジターセンターでパンフレットをもらって南へ伸びるScenic Driveを8マイルほど、道路が未舗装になるところまで行くことにする。

  なにしろ、地平線の向こうまで果てしなく続いているように見えるキャピタル・リーフの断崖はすべて国立公園の敷地内で、南北に100マイルも続く。それなのに、この細長い公園内に敷かれた舗装道路は、北部、Torreyの町に近い、US24が通るこの周辺だけ。US24の北や、南に広がる圧倒的なエリアに点在するスケールの大きなビューポイントへは未舗装の道路は四輪駆動車でなければたどれない。荒削りでスケールのでかい景観を、未知のままに残したちょっとハードな公園。


  そこで、ちょっと早めにランチ・タイム。ビジターセンターからキャンプ・グラウンド・ロードを少し入ってピクニック・サイトで定番になったチーズ、ハム、ミニトマトを挟んだサンドイッチ、飲み物はオレンジジュースと牛乳で昼食。日系のご夫人&御主人とベンチで隣り合わせた。川に沿ったこの一帯だけが、緑にあふれ、木陰には涼しいそよ風が吹き抜けている。Zion 以来の穏やかな空気がうれしい。






   シーニック・ロードを南へ進む。Panorama Pointから見えた断崖の裾に沿った道だ。途中でグランド・ウォッシュGrand Washへの未舗装道路へ入ってみる。


  砂地の道だが、道路状態はよさそうだ。この奥は、映画「明日に向かって撃て」でも知られる西部開拓時代の伝説のアウトロー、ブッチ・キャサディ(ロバート・パーカー)率いる強盗団「ワイルド・パンチ」一味が身を隠したと言われる岩山。




  あす向かうアーチーズ Archesへの拠点町のMoabもワイルド・パンチが足跡を残した地。モルモン教徒の息子だったブッチにまつわり「ゆかり」の地がこの周辺には多い。


  未舗装道路終点の駐車場まで行く。ここから干上がった川底を歩く片道4kのGrand Washのトレイルと、キャサディ・アーチCassidy Archをめぐる高低差のあるトレイルがある。私たちは道の平坦な川底コースを歩いてみることにする。





   道は今は干上がった川底だが、ひとたび雨が降れば、一気に水があふれ「現役」の川に変わる。水の流れが岩を削り、造った穴や棚を見れば、雨が降った時の激流が岩に及ぼす力のすごさがいやでも伝わってくる。両岸から巨岩が迫る隘路。














  不思議な形をした岩山や一枚岩の巨大な壁が立ちはだかるコーナー。さまざまな岩の表情が次々に現れる。川底から見上げる岩切り立った断崖、立ち上がる峰々。

  今まであまりお目にかかったことがないダイナミックで新鮮な風景が次々と現れる。Zionで断念したThe Narrow の渓流歩きはこんな眺めだったのだろうか。そうそう、この眺め、カヌーや川下り船から見上げた風景が近いかも。

  少し下り気味の砂地の河原のトレイルはUA24の終点まで片道2.5マイル(約4k)というから片道1時間足らず、小さな子どもの手を引いた若い夫婦や、リタイア組みのオールド夫婦に時たま出会う程度。

  静かな岩山に囲まれた荒々しい自然を体中で今日の残り時間を気にしながら40分ほど歩いたところで引き返したら午後3時前。


  車に戻って出発しようとしてヒヤリ。何と前輪が砂に取られてから回り。スタック?!大あわてて近くに停めていた車に助けを求めたら、冷静に、一度バックしてから脱出するようアドバイスしてくれた。なるほど、一発で脱出できた。フー。



  シーニック・ドライブScenic Driveに戻ってさらに終点へ。

  道は未舗装になってさらに南へ続いき、壮大な断崖もどこまでも続いている。

「エジプト神殿」

  この周辺には、「エジプト神殿Egiptian Temple」や肉まんのようなちょっとユーモラスな山など、印象深い景色も多く、ちょっとお薦め。


  舗装道路の終点は、キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadへの分岐点でもある。キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadは、Grand Washと同様、整備された未舗装道路なので、雨さえなければ普通車でも問題ない。2kmほど上流のトレイル・ヘッドまで行ってみる。










トレイル・ヘッド





  駐車場が整備されトレイル・ヘッドがあって、キャピタル・ゴージをさらに億へ進むトレイルや黄金の王座Golden Throneへのトレイルの起点になっている。何台か車が停まっている。


  こんな辺鄙なところなのに、結構、アクティブな観光客がいる。でも時計はそろそろ5時、帰り支度をしているグループが多い。





中央奥が「黄金の王座」





  キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadは19世紀に東から西へ開拓を進めたパイオニアたちが、キャピタル・リーフの断崖を避け、東から西へと辿った道で、1884年から1962年まで自動車などが通る道路として使われたというが、このトレイル・ヘッドからは、トレイルの谷越しに「黄金の王座Golden Throne」の山塊も眺めただけで、私たちも引き返すことにする。


























チムニー・ロック











  帰りにFruita付近にあるネイティブが岩に残した絵や、Hickman Bridgeへのトレイル・ヘッドへも寄り道。荒地が続く周辺からは別世界、サルファ―川に沿って現れる緑豊かなまさに「楽園」。

  最後にチムニー・ロックChimney Rockにも立ち寄ってモーテルへ。










  モーテルから、西に沈む太陽の光を真正面から受け、茜色に彩られた断崖をのんびりとながめながらビールをグビ。最高のサンセット。Sunset Pointの夕日もビール付きの魅力には勝てません。




  部屋も広くて、きれい。それに、洗濯機のあるランドリー・ルームまで発見。相棒は大喜びで洗濯に出かけたと思ったらすぐに戻ってきた。「どの洗濯機も洗濯物でいっぱい、どうしよう」「洗濯は終わってるんでしょう、洗濯機から出してまとめて脇に置いておいて、洗濯してしまえば」「そうよね。でもホテルにランドリー・ルームまでついてるなんて、最高ね」

  部屋にはコーヒーメーカーも付いていた。これってモーテルの「質」を示す一つのバロメーターかもしれない。それに部屋もゆったり。旅に出て6泊目、部屋の広さ・クオリティーではグランド・キャニオンのヤバパイ・ロッジと並ぶ、目下のトップクラス。やっぱり100ドルですかね。

  夕食は、ホテルのそばに立つガソリン・スタンド、ゼネラル・ストア&メキシカン・レストランが併設された一角にあるレストラン(La Cueva)。100~200mほど行くと別のレストランもあったけど、メキシカンでOK。相棒は豚肉のスープ煮、私はコーンチップスをボールに仕立てたサラダ。アボガド、豆、牛肉とボリュームがあってなかなかのお味。二人でシェアして大満足。


2013年9月26日木曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月25日


ザイオンを離れ、ブライス・キャニオンへ。
ザイオンの綴れ坂を登ってMt Carmelトンネルを抜け、UT9をMt Carmel Junction まで戻る。US89を左折Savir riverに沿って北上。
Panguitchの少し手前でUT12へ。東へ進んでブライス・キャニオン国立公園Bryce Canyon National Park 方面へ向かう。UT12からUT63へ道を取ると公園だ。
UT63は公園を縦断しての南の端のレインボー・ポイントRainbow Pointまで20マイル以上続いている。一気にRainbow Pointまで行き、フードゥーHoodooと呼ばれるさまざまな尖塔・土柱を眺めがら、サンライズ・ポイントSunrise Point、サンセット・ポイントSunset Pointなどが集中するエリアまで戻ってきて、Hoodooの林を抜けるトレイルを歩く。☆☆☆のおススメだ。
泊まりは公園の外に出てトロピックTropicの町。一度、チェックイン後、サンセット時間を見計らってブライス・ポイントBryce Pointへ。夕日に染まり、次第に暗く沈んでいくHoodooを見つめながら、目いっぱい楽しんだ一日が暮れていった。



5月25日の走行距離=160マイル


宿:ユタ州Tropic (America’s Best Inn and Suite $106.69)

夕食:モーテルに隣接するClarke’s  $35



 2度目のZionの九十九坂を上る。朝の柔らかな日差しが、峰々に光を与えるが谷の底までその光は及んでいない。そんな清々しいザイオンの谷を見おさめ。



 ラスベガスからグランド・キャニオン、モニュメント・バレー、ザイオンを巡るコースは、パックツアーでも人気コース。LAの友人の近くのすし屋さんも日本から訪ねてくる親戚や友達を連れて「何回も通ってるよ」とか。

  深く長く変化に富んだ峡谷グランド・キャニオン、砂漠に立つ雄大な巨岩が造る絶景モニュメント・バレー、岩山と谷と緑のザイオン

 全く違う景色にそれぞれ息を飲み、立ち尽くしてしまう。圧倒的な景色。




  「グランド・キャニオンは一度行っているし、モニュメント・バレーは写真などで何回も見ているので、そういう意味で驚きがなかったけど、ザイオンはすごいと思った。ひょっとすると一番かも」と相棒。


 でも、まだ国立公園めぐりは始まったばかり、この先どうなるか。この日のブライス・キャニオンは、ザイオンから北へ2時間程度なので、ツアーに組み込まれていることが多く、人気の公園である。





   トンネルを抜け、UT9をMt.Carmel Junctinまで戻り、左折してUS98を北上する。道は全体としてはゆったりとした谷を川に沿って進んでいる。グランド・キャニオンのところでも書いた、 コロラド高地Colorado Plateau(1500m~3000m以上の高地)に広がる大段丘Grand  Staircase の真っ只中に今日もいるのだが、左=西側はザイオンから続く山塊が南北に続き、右手=東側には、大段丘のなだらかな斜面が見える。







 このあたりは南北に続くくぼ地状に谷のようになったところで、そこを比較的豊かな水量のsevier川がのびやかに蛇行しながら流れている。








 標識に沿ってUT12へ右折、浅く穏やかに、静かに音を立てるように流れるsevior川を渡る。川原に放置された古い車が、いい具合に“風化”して、フレームだけになっている。思わず車を停めて写真に収める。





  前方に見えた小高い丘は、すぐに、鮮やかな赤茶色の砂岩が雨や風で侵食され、奇妙な形の塔や柱が林立する小さな谷が現れた。

  「Dixie National Forest」内のRed Canyon。これから訪ねるブライス・キャニオンの予習のような赤い谷を過ぎ、「Bryce Canyon National Park」の地味な標識を目印に、うっかりしていると見過ごしそうな小さな分岐路でUT63へ入る。






  標高にすると2000m以上もあるブライス・キャニオン付近では西側から段丘が押し寄せ、東側にクリフ断崖になっている。そのため、私たちのように西から入ると、ただ平原を緩やかに上っているだけ、全容はまるで見えてこない。断崖に立たないと、その絢爛たる壮大な彫刻群は私たちの前に明らかにならない、グランド・キャニオンがそうだったように。





  UT12からUT63に入って少し行くとモーテルなどが集まる小さな町が現れる。公園のエントランス・ゲート付近はちょっとした賑わい。さすが人気の公園。

  年間パス&IDを提示してゲートを通過。公園の公式ガイドや新聞風のガイド紙が必要か聞かれるのも、通過時のお約束だ。やっとあらかじめIDを準備しておく知恵が付いてきた。 

  出発の前日、レンタカーを借りた19日に、LAの西隣にあるベンチュラ郡Ventura Countyのサウザンド・オークスThausand Oaksにある「Santa Monica Mountains National Recreation Area」の事務所まで車の試走を兼ねて走って、年間パスを購入しておいた。80ドルで車1台分、購入当日から1年間有効。実はこの購入にカードが使えず、現金のみでちょっと焦ったが、National Parkでなくても「National」の付く施設、公園でも通用できる優れもの。Lake Powellでも、国立公園でないのにゲートがあって料金を徴収、このパス&IDが威力を発揮した。

    国立公園めぐりでは入場料がバカにならない。1台5ドル、6ドルというところもあるが、有名どころは車1台25ドル。グランド・キャニオン、ザイオン、ブライス・キャニオンは各25ドルだったので、それだけですでに75ドル、さらにグレン・キャニオン(パウエル湖)15ドル、ナチュラル・ブリッジ6ドルで計96ドル。ここまでの1週間あまりで十分に元は取れている計算だ。


   ゲートを通過すると右手に大きな駐車スペース。人気がある公園なので、ピーク時には園内では駐車場不足で交通渋滞を起こすほど、と日本のガイドブックに書いてあった。グランド・キャニオンの一部やザイオンと同じように、駐車場と人気のスポットを結ぶシャトルバスを運行し、車の流入を減らしているのだという。

 ただし、ザイオンのように車を完全にシャットアウトするのではなく、自分の車でも回れる併用方式。それもシャトルバスはサンセット、サンライズ、ブライス、インスピレーションの人気ポイントが集中するゲートに近い北側だけ。

   レインボーポイントなどがリムに沿って続く南側は自分の車で行くしかない。

 そこで、まず南側の端のレインボーポイントまで行って、東側(右側)に5つ6つと点々と続くポイントを追いかけながら北へ戻ってくるという計画を立てた。ゲートからはやや左にカーブしながら続く道へ、この道が20マイル(約30km)あまり、南の端まで続いている。






   シャトルバスが走っている人気のインスピレーション・ポイントの標識を過ぎてしばらく進むと、ほぼリムに沿った道になる。西側(右手)がなだらかな平原に針葉樹のまばらな林が続き、東側(左手)は、大きく蛇行する縁に沿って半円形になったクリフが5つ、6つ…と次々現れる。



   どれも、なだらかな平原が一気に200mから数十mの断崖になり、その壁面が風や太陽にさらされ、雨や氷結に浸食されて、大きく湾曲したクリフごとに巨大な石の彫刻のように何千、何万体並んでいる。


 その精緻な彫刻が施されたような石の彫刻群はHoodoo土柱・尖塔と呼ばれ、まるで仏像やギリシャ彫刻やエジプト・メソポタミアの像が立ち並ぶようにも見えるのは、断崖の壁面が白やピンク、薄茶色や赤みの強い茶色などさまざまな色の層が積み重なり、複雑な陰影を石の彫刻に与え、さらに太陽の光で、その印象が様々に変化するためかもしれない。







   しかもその様子は、大きく湾曲したクリフのグループごとに変わっている。地層の色の違い、地層の固さも違い。北向きのクリフと南向きのクリフでも、風向きや太陽の当たり方が変わってくる。さまざまな要素が、グループごとに違いを生んでいる。



    南から北へ一番奥まで車で行って、奥から順に大きく湾曲したクリフごとのポイントを見ながら戻ってきた。Rainbow Point の南に隣接するYovimpa PointからSwampa Canyon まで8ポイントを見て、シャトルバスが運行されているサンセット・ポイントやサンライズ・ポイント、ブライス・ポイント、インスピレーション・ポイントが集まるエリアまでやってきたが、やっぱり見どころはズバリこのエリア。





  そのHoodooのバリエーションと濃密な集積具合、その美しさは圧倒的。このエリアだけで十分、ブライス・キャニオンの魅力を伝えていると思った。


  それだけに、車も人も、南側とは比べものにならない。広いエリアに展開する駐車スペースも、ポツリポツリと開いている程度。幸い、私たちはお目当てのサンライズ・ポイントの近くに停めることができた。







  本日のハイライト、サンライズからサンセットまで時計回りにQeens GardenからNavajo Loopへ2つのトレイルを辿って谷の底まで降り、自然の彫刻の林をめぐってリムまで上ってくるトレイルを歩く。





  細密彫刻が施されたような石の柱群やエジプトの女王様の像のような石。自然が作った何千体も続く石の彫刻を上から眺めるだけでなく、下から見上げ、間近から眺め、触れる。

 その一つ一つのディテールに驚嘆し、その巨大さに唖然とする。









  この日はすごい風、体が吹き飛ばされそうになるほどの強い風が砂と石の谷を吹きぬけ、砂埃を舞い上げる。


 カウボーイのようにハンカチをマスク代わりに砂塵よけにした変な格好で歩き回る。薄茶色の石の林と、真っ青な空と雲のコントラストが飛び切り美しい。















  ゴール間近「Wall  Street」と名づけられた、摩天楼のようビル群にちなんだ石柱が立ち並ぶ谷底(その谷底から木が一生懸命に遥か上空の青空目指して高く伸びている)から続く急な勾配に、ジグザグに切られた道を登る。


  「まるで、インディー・ジョーンズの世界みたい」あえぐ坂道にも、文句も言わず嬉々として、興奮状態で上っていく相棒。

  高度を上げ、石の摩天楼の上に上がると、今度は石の彫刻群が目に飛び込んでくる。














  写真を撮りながらゆっくり歩いて、4.6kの道のりを2時間あまり。ゲートでもらったガイド紙に「World best 3-mile hike!」と赤字で書いてあったのも納得、大満足の3マイル(約5km)。











  しゃべる相手が私しかいない(周囲はだいたい日本語の分からない方ばかり)のに、この瞬間の感動をとどめておく事ができないのか「絶対に下まで降りてこれは体験するべきよ!」と力説していた相棒が、展望台で「絶対に見るべきですよ」と見ず知らずの人に話しかけている。日本人観光客を見つけて思わず話しかけたらしい。


  前日のザイオンでも大感激していた相棒さんですが「ザイオンも最高だったけど、ブライス・キャニオンの方が感動したかも」日替わりで主役が交代だ。













  本日も、ホテルに一度チェックインして、サンセットを見に戻ってくる予定。モニュメント・バレーと違い、今日のホテルは近い。10kmたらず。ホテルに隣接してガソリン、ゼネラル・ストア、レストランがある。




  日没は8時ごろ(カリフォルニア時間7時)なので、夕食を先に済ませる。本日のチョイスはモーテルに並んでいたレストランでステーキ。ただし、2人前を頼むなんてことはやめました。これまでのレストラン経験で、アメリカのレストランの量の多さは痛感。


  そこで、この日はステーキ1人前、サラダ1人前というオーダー。サラダは予想通りのデカ盛り、ステーキは、肉好きの相棒によると「ちょっと物足りなかった。1人前ずつ食べたかったかな、だっておいしかったもの」。私はほどほどの量で大満足。ラズベリーのドレッシングでいただいたサラダが期待をはるかに超えるおいしさ。本日の満足度に大いに貢献。お値段は35ドル(29.40+チップ)と、まずまずリーズナブル。



  8時過ぎ、再びブライス・キャニオンのリムへ。ブライス・ポイントで夕日を迎える。太陽がリムの向こうに沈んでいくにしたがって、光を浴びていた遠くの石柱たちの輝きが下から順に上がっていく。クリフに近い石柱たちはすぐに影に入ってしまい、その色を濃いものにしている。その分、光を浴びている石柱たちの輝きが一層に増す。





  静かに暮れていく一日を、こうして石柱と向かい合っている観光客はポツンポツンと5、6人、数えるほど。今日という日は私たちに見つめられながら、リムの林の向こうに消えた。後に残されたオレンジ色の太陽の最後の光も、群青色の空にすぐに包まれていく。






2013年9月21日土曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月24日


丸一日、ドップリとザイオン国立公園。公園内は無料バスで移動。

最後に車で、キャニオン・オーバールック・トレイルCanyon Overlool Trailのトレイル・ヘッドまでホテルから往復。
ザイオンの谷を眼下に見下ろす絶景はおすすめ。


走行距離=15マイル


宿:ユタ州Sprigdale(Terrace Brock Lodge $192.32 に連泊)


夕食:Zion Pizza & Noodle$35.71


買い物:Sol Foods Super Springdale(食料品) $16.93 土産・マグネット$3.17





 早朝から夜まで、グランド・キャニオンやモニュメント・バレーをめぐる超強行日程が終わり、これからは時間をかけて比較的ゆったり公園を訪ねる旅だ。まずはザイオン国立公園に一日どっぷり。





  朝7時過ぎに町を走るシャトルバス停に向かう。この市内シャトルバスで公園入り口まで行き、ゲートを通って公園内を走る別のシャトルバスに乗り換える。

 そんなルールをよく知らないもので、年間パスを車に置いたまま、持ってくるのを忘れてしまった。入場料2人分25ドルを支払うと、レシートを渡され「7日間有効なので、これを車に張っておくように」と言われた。「いえ、年間パスを持っているのですが、今持ってくるのを忘れただけなので必要ありません」と答えると「それなら今回だけは見逃してあげる。次からは必ず忘れないように」何と、レジで25ドルをわざわざ打ち直し、返してくれた。それを見ていた後ろの人が、ちょっとびっくり顔。朝いちばんでプチ・ラッキー。


 本日のメーンイベントは、公園内の最深部にあるテンプル・オブ・シワワTemple of Sinawavaからナローズ The  Narrowsと名づけられた川をじゃぶじゃぶ歩いて上流を目指す、ちょっとワイルドなトレイルへの挑戦。まだまだ水が冷たいシーズンなので、お昼ごろにナローズ入りを想定。それまでにシャトルバスを使って途中のポイントをできるだけ訪ね歩き、ナローズ歩きの後に余裕があれば、絶景ポイントへの挑戦だ。一度公園内を出てホテルに戻り、車で昨日通ったトンネルの東出口まで行って、そこから始まるザイオン渓谷を見下ろすポイントまで歩きたい。とにかく、頑張って歩き回る一日。

  朝日が、山々の頂上付近を茜色に染めて、始まったザイオンの一日。公園内のシャトルバス乗り場にも観光客はまばら。まずザイオン・ロッジでバスを降り、近くのエメラルド・レイクへ向かう。ロッジはザイオン国立公園内で唯一の宿泊施設。そこに泊まったらしい、日本からの団体さんツアー客とすれ違った。グランド・キャニオン以来の日本人グループ。深い谷間のこのあたり、まだ朝日は差し込んでこない。ひんやりとした空気が心地よい。ウィンド・ブレーカーのジッパーを首まで上げて歩き始める。




  1kmほどで山道を歩くと、岩が少しえぐれてオーバーハングになり、そこを水が小さな滝になって滴り落ち、ちょっとした水たまり?が。それが「ロウアー・レイク」とは全く気付かずに通り過ぎてしまった。チンプンカンプンな道標が現れたので、これが「レイク?」と大声でいいたいほどの「レイク」まで戻って、元来た道をザイオン・ロッジまで引き返した。もっともそのまま「The Grotto」まで歩いて、そこからバスに乗っても距離的には変わりがなかったみたいだ。ロウアーから1km弱、山道を登るとアッパー・レイクがあるらしい。




  再びバス。Virgin River の谷に沿って公園のゲートからTemple of Sinawava まで10kmあまりを道路が走り、その間を2台連結のバスがピストンで往復している。バスの大きな車窓から道の両側のそそり立つ山々。抜けるような青空と、圧倒的な量感で迫る赤茶色の垂直にそびえる岩の壁、その岩をぬって流れるVirgin riverの谷は緑の木々で覆われている。頂上付近は真っ白に輝く岩を頂いた山塊もある。





  谷がちょっと開けた「Big Bend」で降りる。川が大きく湾曲し、下流の谷の向こうにそそり立つ近くの岩の壁と、少し遠くの峰の頂が重なる峡谷。その絶景をバックに写真を撮っていたら、「写真撮ってあげましょう」と声をかけられた。

  今回の旅行中、よく「写真を撮ってあげましょうか」と声をかけられた。声をかけられるというのは、予想以上に楽しい。ちょっとした会話が始まるきっかけになることもある。アメリカの人は年取ったカップルか家族連れで旅行していることが圧倒的に多い。先に私たちに声をかけ、撮り終わったら私たちも、というパターン。このあたりの感覚はどこでも同じだが、声がかかる率が日本より各段に高い。
 

 でも、撮ってもらって申し訳ないのだが、撮ってもらった写真は、どうも私たちの望んでいた構図でないことが多い。この景色をバックに写してほしい!のに、背後の景色より、二人の映り具合が中心という写真になりがち。アメリカの人って人が中心なんでしょうか。このときの写真も、2人はバッチリ写っているのですが肝心の谷の景色が…。欲が深すぎですね。

  2両連結のシャトルバスは10分も待たずに来るので、気楽に乗ったり降りたりという使い方ができる。少しゆったり景色を見回し、写真を撮って、腰をかけていると次のバスがやってくる、と言うぐらいの感じが心地よく、便利である。「Big Bend」の次は終点の「Temple of Sinawava」。ここはちょっと立派な建物にトイレなどの設備もある。終点だけあって結構なにぎわい。ここからお目当てのThe Narrowsまで、30~40分のトレイルが始まる。





   赤や茶色のそそり立つ岩に包まれた谷に沿って整備された道をくねくね、穏やかに上っていく。上流の懐が深いせいか、谷は広く明るく、道も穏やかだ。リスが愛嬌をふりまく道を30分ほど歩くとちょっとした人だかり。歩道の終点に着いた。

   ここから上流の道はない。さらに上流を目指す人は自己責任で川をじゃぶじゃぶ歩いていく。ガイドブックなどには川の水量が少ない夏場は、簡単に川を歩いて行ける、これはぜひ体験したい!な~んて、感じで書いているので、こっちもすっかりその気になって、腹をくくってここまで来た。




  そういう川を歩こうという人たちが、川原のあちこちで準備をしている。私たちも、歩けるところまで歩いてみる覚悟で来ているので、リュックをビニールで覆ったり、スニーカーの靴下を脱いだり、それなりの態勢を整える。

   周りを見回すと、ほとんどの人が木の杖やストックを持っている。アユ釣りの釣り師が着用するような足元から胸まであるゴム長を着込んでいる人も結構いる。これは本格的だ。ストックもなし、せいぜい、リュックの簡単に覆うビニール(それもスーパーか何かの袋)しか持ってきていない、不埒なわれわれはまるでお話にならない。こりゃあ、まずいぞ。


  それでも、川に入ってみる。冷たい!しかも、大小の石で覆われた川原や川底は不安定で転びやすい。杖やストックは確かに必需品だ。辺りを見回すと、川原の隅に杖に使えそうな枝が立てかけてある。1本しかないので、相棒にそれを渡し、私は川原に転がっていた流木を杖代わりに歩き始める。中には、私たちよりもっと大胆!靴を手に素足で歩いている人がいる。それも女性。どうやら中国人観光客みたい、パワフル。



    水嵩はひざ小僧あたりまである上に、流れが速い。足元を取られそうになりながら、川原から川原を訪ねながら歩く。へっぴり腰の私たちには杖が必需品。


 周りの岩は、川の流れに侵食され、なめらかな曲線を画きながら川原から1m以上の高さのあたりで、大きく抉れている。水量の多いときには、川の水はくびれのところを流れているのだ。歩き始めから100mほどで、まず素足のグループが断念。川の流れと川底の石は、想像以上に難物。水遊び感覚ではとてもじゃないが歩いていられない。

  さらに100m。私たちを追い抜いていった本格派のグループ、グイグイ進むリーダーらしい人は、何と胸辺りまで水に浸かりながら進んでいく。後続の人たちは、別ルートを探すがどうやら胸まで浸かる以外にルートはないらしく、次々に水に沈んでいく。しかし2、3mほどの深瀬を越しさえすれば、すぐに次の川原。

  その光景を見て、私たちは躊躇せず断念。とてもじゃないけど、わきの下近くまでこの冷たい水につかるなんてことは想定外。そんな準備はまったくしていない。さらに濡れネズミでこの後、歩き続ける気迫も体力もない。この間、歩き始めてわずか15分足らず、さっさと撤退です。

  水量が少なくなる本格的な夏シーズンには、もっと気楽に上流まで進め、両岸から迫ってくる岩の谷間を縫って川をさかのぼるダイナミックで、変化に富んだ両岸の表情が見られるトレイルらしいのだが、もう少し水が引いて、せめて腰当たりでないと私たちには難しい。

  少なくとも片道30分ほど、往復で1時間は歩く覚悟をしていたので、時間に余裕が出来た。とりあえず川原でサンドイッチの昼食。





   帰り道は「The Grotto」で下車。すぐ近くの展望台からAngels Landing方面の景色をながめる。天使が舞い降りる所(てっぺん?)まで3、4時間、谷を見下ろす絶景のトレイルがあるらしいが、バージン川のゆったりとした流れの奥に広がる赤茶や白の岩で出来た山の景色を楽しんだだけで遠慮しておく。







    始発のビジターセンター前で「Court of the Patriarchs」(司教の宮殿)の雄大な峰々を眺める。Twin  Brothers、Mountain of the Sunなど、朝はじっくり眺めることが出来なかった荘厳な山と谷。巨大な岩の山が間近に迫るように立ち並ぶ様子は、昼下がりの明るい日差しに映えて、清清しく荘厳でさえある。






   一度宿へ戻り、自分たちの車に乗り換えて、前日通ってきた東入り口のトンネル、そのトンネルを出たところ(東側)から始まる絶景ポイントキャニオン・オーバールック・トレイル「Canyon Overlook Trail」へ向かう。ここは「The Narrows」と並ぶ私たちのザイオンでのハイライト。


   昨日とは逆、綴れ坂を徐々に高度を上げてザイオン谷の絶景を振り返り振り返り、上り詰めるとトンネルが待ち構えている。大型車のすれ違いのためこの日は片側通行規制に遭遇。たまたま私たちが今回のグループ最後の車だった。最後の印のバトンを係員に渡され、出たところにいる係員に渡すよう言われた。昔の単線の鉄道も、こんな風に交互に単線を走った。単純だけど、確実な方法だ。


   出口に隣接して駐車場が2カ所。車を停めると、目の前がトレイル・ヘッド。赤茶けた荒々しい岩の塊、砂地混じりのトレイル、まばらに立つ針葉樹、サボテン系の植物。日差しがきつい。日陰のジメッとした湿気が付き物の日本の山歩きとはかなり様子が違う。明らかに乾燥系。



   オーバーハングの巨大な岩の中を抜け、最後は、白やピンクの地層がうねって盛り上がり地層むき出しのまま山になっている、昨日見た「チェッカー・ボード・メサ」のような、うねる岩の山を登ると、行き止まり。垂直の壁の頂上、キャニオン・オーバールックだ。トレイル・ヘッドから30分あまりだった。











































    前方は遮るものがない。視界の上3分の2はまぶしい青い空。下3分の1のうちまず真正面、遠くに山々の頂きが白く光り輝いている。その両サイドから赤茶けた岩の山々とまばらな緑が伸び、赤茶けた岩の壁に挟まれた谷は眼の下からずっと谷の向こうまで続いている。その谷を今、走ってきた道路の黒いアスファルトが伸びている。吹き抜ける風が心地いい。手すりを頼りにこわごわ覗き込んだ目の下は、さっき、車で上ってきたばかりの綴れ折りの坂、車が小さい!シャトルバスで巡ったザイオン公園は、あの真正面の白く輝く山々の右手へ入っていったあたりか…。



展望台は右の半円ドーム型の上のテラス部分

  そうだ、この「Canyon  Overlook」のポイント、あの綴れ坂からきっと見えたはずだ。どうして気づかなかったんだろう。位置から言えば、大きな半円形に岩が抉れていた、その上あたりのはず?(そう、帰りに確かめた。確かに、目を凝らすと思っていた通りの場所にかすかに人間らしい姿が見えた!)








  今日も傾くホテル、夕食はイタリアンにした。前日、通りがかりで見ていたら、まずまずの入りだったので。まだ5時を少し回ったところさすがに、本日はまだ客がほとんどいない。注文したのは直径40センチほどのピザと、ペンネのパスタセット・サラダつき。しかし、セットのおまけのサラダが結構なボリューム、それと巨大ピザはパン生地もずっしり。これだけで、二人はもう十分。ガーリックトースト付きのパスタは茹で過ぎのフニャフニャ、味も大味で持て余し。普通に一人前ずつ注文すると、どうやら大変な量になりそう。大量に食べ残して、今夜は35.71ドル。