2013年9月30日月曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月26日
                          
本日はキャピタル・リーフ国立公園の一日。
トロピックのホテルを出てまず立ち寄ったのが、小さな隣町Cannonvile。UT12を外れ、その名もココダクロム・ウェイKodachrome Way をコダクロム・ベイスン
州立公園Kodachrome Basen State Park まで、ちょっと寄り道。
再びUT12に戻ってグランド・ステアケース=エスカレンテ国定公園内を走る。エスカレンテの町を過ぎ、ちょっと不思議な高地を走るころから空が黒い雲に覆われ雨模様。9200フィートLion Mountainの峠越えでは頂上付近でちょっと吹雪にも遭遇だ。
一気に山を下ると天気も回復。Torreyの外れでUT24に合流。東へ少し行き公園着。キャンプサイトでサンドイッチの昼食を済ませ後は日暮れまで公園内をドライブ&ハイキング。GorgeやWashと名付けられた、雨が降ったときに川になる“道”を通ってトレイル・ヘッドまでドライブ。そこで車を置いて川の道をしばしハイキング、川床から見上げる谷はいつもと違う風景、ラフティングの気分ってこんな感じかな?
大段丘が造り出すスケールのでかい、手つかずの自然に大満足。

今夜の宿は壮大な断崖を望める、公園に隣接したモーテル。
                     


走行距離=260マイル


宿:ユタ州Torrey (Howard Johnson $109.15)

給油:$33.70=Tropic Clarke's Country Market 

夕食:Howard Johnson そばのLa Cueva $30

買い物:食料品など$10.36、切手$8.4 

入場料:Kodachrom Basin state park $6


  今回の国立公園ドライブ・ツアーはかつて西部劇の舞台だったような辺鄙なところばかりを回っている。でもモーテルがあるような町なら、食べる所はあるだろうと、何となく高をくくっていた。が、実際は、町なんかはなく、モーテルがポツンとあるだけという所もある。でも、そういうところでは、モーテルに隣接してガス・ステーション、レストラン、ゼネラル・ストアが「3点セット」で並んでいる。ぜいたくさえ言わなければ、食事から買い物まで、たいていのことはモーテル周辺だけで完結する。


  出発前、夕食でお世話になったレストランに隣接するガス・スタンドでガソリンの方も23日以来の給油を済ませて、出発。



  ホテルの前の道をブライス・キャニオンとは逆方向、東へとUT12を進み、次の町CannonvilleでUT12を外れてコダクローム・ベイスン州立公園Kodachrome Basen state parkへ立ち寄る。


  入場料1人3ドルなり。まだ朝が早いうえに、空には雲がかかったあいにくの空模様。公園内のキャンプ場で一泊した人たちはやっと起き出したばかりだった。







  コダクローム・ベイスン州立公園は、かつて“コダ・カラー”で世界中を席巻したカメラ・フィルム・メーカー、コダックのカラー・フィルムの商品名にちなんだ名前。赤い岩や白い岩が作り出す色鮮やかな塔・石柱などの自然の造形美が自慢の公園なのだそうだ。









  しかし煙突のような塔チムニー・ロックChimney Rockや、立ち尽くす男性像のような石柱など、せっかくの名所も、赤や白の岩に鮮やかな色彩を与えてくれる太陽が厚い雲の向こうでは、どんよりくすんで、寒々。実際、気温もバミューダ・パンツでは寒くて長居出来ないほど。

  コンパクトな空間に、30分~1時間程度のほどよい長さのトレイルが何コースかあり、天候さえよければ2時間ほど、カラフルな岩山の散策楽しめればよかったのだが、時間とタイミングが悪かったみたいだ。



  早々に切り上げ、途中、来るときに見つけておいたCannonvilleの町の郵便局post officeに立ち寄る。町の集会場のような施設も兼ねた四角い2階建ての1階がpost office。相棒は絵葉書用の切手1.05ドルを8枚買い、投函する。この旅に出て初めての絵ハガキ。スタートして1週間、やっといろいろな余裕も出てきた。

  それにしても、郵便局があるくらいなのだから、郵便局が面しているこの100-200メートルほどの通りが町の「中心街」なのだろうが、家はまばらに10軒程度、周辺には人っ子一人いない。郵便局の建物も、ドアが開いているのかどうかもよく分からず、実際入ってみて初めて、おばあさんが窓口にいたので営業中と分かるほど。静まりかえったアメリカの小さな田舎町。

  UT12に戻ってTorreyを目指す。

  
  道はEscalanteの町を過ぎEscalante CanyonをへてBoulderという小さな集落へと続く。コダクローム・ベイスン州立公園からずっとどんよりとした曇り空、少し雨も混ざり始めた。ズーッと青空に恵まれていた今回の旅行で初めての雨。そんな雨模様の中、Grand Staircase-Escalante National Monumentの一部で、最後のフロンティアと呼ばれる荒涼とした岩の台地を車は走っている。




  事実、このあたりはアメリカ地図で最後まで残されていた空白地帯だったらしい。1872年にパウエル湖でおなじみのジョン・ウエスリー・パウエルが2度目の探検でその様子をリポートして初めて、このあたりのことがアメリカ国内でもようやく知られるようになった。


  ちなみに第1回目の探検でパウエルがアメリカ中にその存在を広く知らせたのが、コロラド付近のグリーンリバーからコロラドリバーを下ったグランド・キャニオン周辺。




  パウエルが2回の探検で踏査した広大な地域が、まさに私たちが21日からドライブしている地域ということになる。


  それだけに、この地域の自然はまだまだほとんど手付かずで残されたところが多い。その代表がGrand Staircase-Escalante National Monument。ブライス・キャニオンBryce Canyon やキャピタル・リーフCapital Reef から パウエル湖Lake Powell、グレン・キャニオンGlen Canyonに及ぶ、広大なエリアがNational Monumentに指定されているが、National Monumentなのに、そこを管理しているのは、国立公園やNational Monument、National Historic Siteなどを管理しているUS National Park Service(NPS)という組織ではなくBureau of Land Management(BLM)という別組織、という特別な「公園」。

  Escalanteの町から南、コロラド川まで続くBLM200 Hole In the Rock Roadの未舗装道周辺、「The Wave」として知られるようななったUS89周辺など、未開発のすばらしい自然が残っているらしい。




  Escalanteの町を出て10マイルあまり、道は一気に高度を上げ、ちょっと高地を走る。360度見渡す限り緩やかに波打つ滑らかな白っぽい岩が続く高原。UT12は、まばらに樹木がはえた、穏やかに波打つような地形に沿って、はうようにくねくねと曲がりながら上り・下りして、白い岩とまばらな樹木が作る地平線の向こうに消えている。そんな道が数ヤードあまり続いて、やっとアメリカで見慣れた赤茶色をした奇妙な岩の柱や岩の塊のある風景が現れる。

  日本ではまず見たことがない、という荒野ばかりをこの1週間走っているが、それでもちょっと奇妙な感じのちょっと印象的な道。


  おまけに、こんな荒野のど真ん中にコーヒーハウス「Koffeehouse」までが現れちょっとびっくり。

  曇り空のU12、珍しくViewpoint が(Calf Creek Viewpoint)があったので、車を停めてみる。谷を見下ろすポイントだったが、目が肥えてきた?私たちには「ふーん、こんなものなの?」荒野から少しずつ緑が増え、久々に緑豊かなBoulderの集落。少しほっとする。


 
 集落を抜け再び山道、高度が上がる。それにともない空がどんどん怪しくなってきた。


  何と雨は雪へ。9200フィートのLion  Mountainの峠越えでは頂上付近でちょっと吹雪にまで遭遇してしまった。頂上付近は道路の両脇が白く積雪するほど。





  一気に山道を下り切るとTorreyの町。下るにしたがって、青い空が広がっていく。同じような荒野をドライブしているようだが、日本でいえば国境にある峠のようなところだったのだろうか。


   町の郊外にあるT字路、目の前を左右に走るのがUT24。左へ行けばTorreyの町の中心。右へ行くとキャピタル・リーフCapital Reef。町の郊外、T字路周辺は緑が多かったが、すぐに、荒地に。

   すると左手に今日の宿ハワード・ジョンソンHoward Johnsonとガス・ステーションが見えてきた。その先にもガス・ステーションやレストラン、モーテルらしい建物が見え、前方には赤茶色の岩だらけの断崖がはるか彼方まで続くダイナミックな景観が迫ってきた。




   絶景を背景にしたモーテルから数分も行くと公園の敷地内。赤い石柱のChimney RockとPaorama Pointが道路を挟んで待ち構えている。Panorama Pointの駐車場近くの展望台に立つと、赤茶けた岩や薄い青みや緑青がかった岩の層が彩りを添える断崖が遥か彼方、地平線まで営々と続いていた。



   断崖は100mほどの高さはあるのだろうか。押し寄せる津波が凍りついたような、巨大な地殻の褶曲・しわの断面が見せる断崖は、赤や赤茶色、さらに青みがかかった灰色の層が、巨大な砦か、難攻不落の懸崖の城のように連なり、豊かな色彩や造形で彩られた壮大な壁となって、澄み切った青い空の彼方まで見通せる透明さの中、見える限り続いている。10マイルや20マイルなんてものじゃない、少なくとも数十マイルは続いていそうだ。





   つい3時間ほど前までいたブライス・キャニオンが繊細な岩の芸術なら、キャピタル・リーフの醍醐味は荒削り・手つかずの自然の頑強な美しさ、だろうか。


  ドライブが始まって1週間、LAから移動の初日を除けば、毎日のように、アリゾナ州北部からユタ州南部にかけて広がるコロンビア・プラトーと名付けられた高地に展開する、乾燥し切った岩だらけ、荒地だらけの荒野を走っているのに、岩が造り出す景色はどれも同じものがない。今日もまた、絶景に息を飲む。



   駐車場わきから続く未舗装道路の先にはGoosenecks OverlookとSunset Pointのビューポイントもある。中国人団体らしい大型バスが到着したので、未舗装道をたどってさらに先にあるビューポイントへ移動する。

   メキシカン・ハットの近くにもGoosenecksがあったが、ここもΩのように川が大きく湾曲したポイント。川の縁に立つと、目の下の川の地形や地層と、遠く連なる断崖のスケール感が、この土地の厳しいまでの荒涼感をさらに際立たせている。小さな駐車スペースがあり、左方向にはSunset Pointの標識がある、夕日のポイントならもう一度出直してみるか…。



 サルファ―川Sulphur Creekに沿って続くUS24を東へ少し行くと、緑の樹木が茂る谷に入る。道が右に分かれる分岐点に公園のビジターセンターなどの施設がある。

  今夜泊まるハワード・ジョンソンからも10分足らずの場所。そのままUS24を東へ少し先へ行くと、19世紀にモルモン教徒が始めた果樹園や学校跡もある緑の楽園のような静かなスポットFruita。周囲を覆う岩と砂の世界とは別天地のオアシスだ。

  まるで巨大な西洋の城砦のような「The Castle」が背後にそびえるビジターセンターでパンフレットをもらって南へ伸びるScenic Driveを8マイルほど、道路が未舗装になるところまで行くことにする。

  なにしろ、地平線の向こうまで果てしなく続いているように見えるキャピタル・リーフの断崖はすべて国立公園の敷地内で、南北に100マイルも続く。それなのに、この細長い公園内に敷かれた舗装道路は、北部、Torreyの町に近い、US24が通るこの周辺だけ。US24の北や、南に広がる圧倒的なエリアに点在するスケールの大きなビューポイントへは未舗装の道路は四輪駆動車でなければたどれない。荒削りでスケールのでかい景観を、未知のままに残したちょっとハードな公園。


  そこで、ちょっと早めにランチ・タイム。ビジターセンターからキャンプ・グラウンド・ロードを少し入ってピクニック・サイトで定番になったチーズ、ハム、ミニトマトを挟んだサンドイッチ、飲み物はオレンジジュースと牛乳で昼食。日系のご夫人&御主人とベンチで隣り合わせた。川に沿ったこの一帯だけが、緑にあふれ、木陰には涼しいそよ風が吹き抜けている。Zion 以来の穏やかな空気がうれしい。






   シーニック・ロードを南へ進む。Panorama Pointから見えた断崖の裾に沿った道だ。途中でグランド・ウォッシュGrand Washへの未舗装道路へ入ってみる。


  砂地の道だが、道路状態はよさそうだ。この奥は、映画「明日に向かって撃て」でも知られる西部開拓時代の伝説のアウトロー、ブッチ・キャサディ(ロバート・パーカー)率いる強盗団「ワイルド・パンチ」一味が身を隠したと言われる岩山。




  あす向かうアーチーズ Archesへの拠点町のMoabもワイルド・パンチが足跡を残した地。モルモン教徒の息子だったブッチにまつわり「ゆかり」の地がこの周辺には多い。


  未舗装道路終点の駐車場まで行く。ここから干上がった川底を歩く片道4kのGrand Washのトレイルと、キャサディ・アーチCassidy Archをめぐる高低差のあるトレイルがある。私たちは道の平坦な川底コースを歩いてみることにする。





   道は今は干上がった川底だが、ひとたび雨が降れば、一気に水があふれ「現役」の川に変わる。水の流れが岩を削り、造った穴や棚を見れば、雨が降った時の激流が岩に及ぼす力のすごさがいやでも伝わってくる。両岸から巨岩が迫る隘路。














  不思議な形をした岩山や一枚岩の巨大な壁が立ちはだかるコーナー。さまざまな岩の表情が次々に現れる。川底から見上げる岩切り立った断崖、立ち上がる峰々。

  今まであまりお目にかかったことがないダイナミックで新鮮な風景が次々と現れる。Zionで断念したThe Narrow の渓流歩きはこんな眺めだったのだろうか。そうそう、この眺め、カヌーや川下り船から見上げた風景が近いかも。

  少し下り気味の砂地の河原のトレイルはUA24の終点まで片道2.5マイル(約4k)というから片道1時間足らず、小さな子どもの手を引いた若い夫婦や、リタイア組みのオールド夫婦に時たま出会う程度。

  静かな岩山に囲まれた荒々しい自然を体中で今日の残り時間を気にしながら40分ほど歩いたところで引き返したら午後3時前。


  車に戻って出発しようとしてヒヤリ。何と前輪が砂に取られてから回り。スタック?!大あわてて近くに停めていた車に助けを求めたら、冷静に、一度バックしてから脱出するようアドバイスしてくれた。なるほど、一発で脱出できた。フー。



  シーニック・ドライブScenic Driveに戻ってさらに終点へ。

  道は未舗装になってさらに南へ続いき、壮大な断崖もどこまでも続いている。

「エジプト神殿」

  この周辺には、「エジプト神殿Egiptian Temple」や肉まんのようなちょっとユーモラスな山など、印象深い景色も多く、ちょっとお薦め。


  舗装道路の終点は、キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadへの分岐点でもある。キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadは、Grand Washと同様、整備された未舗装道路なので、雨さえなければ普通車でも問題ない。2kmほど上流のトレイル・ヘッドまで行ってみる。










トレイル・ヘッド





  駐車場が整備されトレイル・ヘッドがあって、キャピタル・ゴージをさらに億へ進むトレイルや黄金の王座Golden Throneへのトレイルの起点になっている。何台か車が停まっている。


  こんな辺鄙なところなのに、結構、アクティブな観光客がいる。でも時計はそろそろ5時、帰り支度をしているグループが多い。





中央奥が「黄金の王座」





  キャピタル・ゴージCapital Gorge Roadは19世紀に東から西へ開拓を進めたパイオニアたちが、キャピタル・リーフの断崖を避け、東から西へと辿った道で、1884年から1962年まで自動車などが通る道路として使われたというが、このトレイル・ヘッドからは、トレイルの谷越しに「黄金の王座Golden Throne」の山塊も眺めただけで、私たちも引き返すことにする。


























チムニー・ロック











  帰りにFruita付近にあるネイティブが岩に残した絵や、Hickman Bridgeへのトレイル・ヘッドへも寄り道。荒地が続く周辺からは別世界、サルファ―川に沿って現れる緑豊かなまさに「楽園」。

  最後にチムニー・ロックChimney Rockにも立ち寄ってモーテルへ。










  モーテルから、西に沈む太陽の光を真正面から受け、茜色に彩られた断崖をのんびりとながめながらビールをグビ。最高のサンセット。Sunset Pointの夕日もビール付きの魅力には勝てません。




  部屋も広くて、きれい。それに、洗濯機のあるランドリー・ルームまで発見。相棒は大喜びで洗濯に出かけたと思ったらすぐに戻ってきた。「どの洗濯機も洗濯物でいっぱい、どうしよう」「洗濯は終わってるんでしょう、洗濯機から出してまとめて脇に置いておいて、洗濯してしまえば」「そうよね。でもホテルにランドリー・ルームまでついてるなんて、最高ね」

  部屋にはコーヒーメーカーも付いていた。これってモーテルの「質」を示す一つのバロメーターかもしれない。それに部屋もゆったり。旅に出て6泊目、部屋の広さ・クオリティーではグランド・キャニオンのヤバパイ・ロッジと並ぶ、目下のトップクラス。やっぱり100ドルですかね。

  夕食は、ホテルのそばに立つガソリン・スタンド、ゼネラル・ストア&メキシカン・レストランが併設された一角にあるレストラン(La Cueva)。100~200mほど行くと別のレストランもあったけど、メキシカンでOK。相棒は豚肉のスープ煮、私はコーンチップスをボールに仕立てたサラダ。アボガド、豆、牛肉とボリュームがあってなかなかのお味。二人でシェアして大満足。


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