2013年9月26日木曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月25日


ザイオンを離れ、ブライス・キャニオンへ。
ザイオンの綴れ坂を登ってMt Carmelトンネルを抜け、UT9をMt Carmel Junction まで戻る。US89を左折Savir riverに沿って北上。
Panguitchの少し手前でUT12へ。東へ進んでブライス・キャニオン国立公園Bryce Canyon National Park 方面へ向かう。UT12からUT63へ道を取ると公園だ。
UT63は公園を縦断しての南の端のレインボー・ポイントRainbow Pointまで20マイル以上続いている。一気にRainbow Pointまで行き、フードゥーHoodooと呼ばれるさまざまな尖塔・土柱を眺めがら、サンライズ・ポイントSunrise Point、サンセット・ポイントSunset Pointなどが集中するエリアまで戻ってきて、Hoodooの林を抜けるトレイルを歩く。☆☆☆のおススメだ。
泊まりは公園の外に出てトロピックTropicの町。一度、チェックイン後、サンセット時間を見計らってブライス・ポイントBryce Pointへ。夕日に染まり、次第に暗く沈んでいくHoodooを見つめながら、目いっぱい楽しんだ一日が暮れていった。



5月25日の走行距離=160マイル


宿:ユタ州Tropic (America’s Best Inn and Suite $106.69)

夕食:モーテルに隣接するClarke’s  $35



 2度目のZionの九十九坂を上る。朝の柔らかな日差しが、峰々に光を与えるが谷の底までその光は及んでいない。そんな清々しいザイオンの谷を見おさめ。



 ラスベガスからグランド・キャニオン、モニュメント・バレー、ザイオンを巡るコースは、パックツアーでも人気コース。LAの友人の近くのすし屋さんも日本から訪ねてくる親戚や友達を連れて「何回も通ってるよ」とか。

  深く長く変化に富んだ峡谷グランド・キャニオン、砂漠に立つ雄大な巨岩が造る絶景モニュメント・バレー、岩山と谷と緑のザイオン

 全く違う景色にそれぞれ息を飲み、立ち尽くしてしまう。圧倒的な景色。




  「グランド・キャニオンは一度行っているし、モニュメント・バレーは写真などで何回も見ているので、そういう意味で驚きがなかったけど、ザイオンはすごいと思った。ひょっとすると一番かも」と相棒。


 でも、まだ国立公園めぐりは始まったばかり、この先どうなるか。この日のブライス・キャニオンは、ザイオンから北へ2時間程度なので、ツアーに組み込まれていることが多く、人気の公園である。





   トンネルを抜け、UT9をMt.Carmel Junctinまで戻り、左折してUS98を北上する。道は全体としてはゆったりとした谷を川に沿って進んでいる。グランド・キャニオンのところでも書いた、 コロラド高地Colorado Plateau(1500m~3000m以上の高地)に広がる大段丘Grand  Staircase の真っ只中に今日もいるのだが、左=西側はザイオンから続く山塊が南北に続き、右手=東側には、大段丘のなだらかな斜面が見える。







 このあたりは南北に続くくぼ地状に谷のようになったところで、そこを比較的豊かな水量のsevier川がのびやかに蛇行しながら流れている。








 標識に沿ってUT12へ右折、浅く穏やかに、静かに音を立てるように流れるsevior川を渡る。川原に放置された古い車が、いい具合に“風化”して、フレームだけになっている。思わず車を停めて写真に収める。





  前方に見えた小高い丘は、すぐに、鮮やかな赤茶色の砂岩が雨や風で侵食され、奇妙な形の塔や柱が林立する小さな谷が現れた。

  「Dixie National Forest」内のRed Canyon。これから訪ねるブライス・キャニオンの予習のような赤い谷を過ぎ、「Bryce Canyon National Park」の地味な標識を目印に、うっかりしていると見過ごしそうな小さな分岐路でUT63へ入る。






  標高にすると2000m以上もあるブライス・キャニオン付近では西側から段丘が押し寄せ、東側にクリフ断崖になっている。そのため、私たちのように西から入ると、ただ平原を緩やかに上っているだけ、全容はまるで見えてこない。断崖に立たないと、その絢爛たる壮大な彫刻群は私たちの前に明らかにならない、グランド・キャニオンがそうだったように。





  UT12からUT63に入って少し行くとモーテルなどが集まる小さな町が現れる。公園のエントランス・ゲート付近はちょっとした賑わい。さすが人気の公園。

  年間パス&IDを提示してゲートを通過。公園の公式ガイドや新聞風のガイド紙が必要か聞かれるのも、通過時のお約束だ。やっとあらかじめIDを準備しておく知恵が付いてきた。 

  出発の前日、レンタカーを借りた19日に、LAの西隣にあるベンチュラ郡Ventura Countyのサウザンド・オークスThausand Oaksにある「Santa Monica Mountains National Recreation Area」の事務所まで車の試走を兼ねて走って、年間パスを購入しておいた。80ドルで車1台分、購入当日から1年間有効。実はこの購入にカードが使えず、現金のみでちょっと焦ったが、National Parkでなくても「National」の付く施設、公園でも通用できる優れもの。Lake Powellでも、国立公園でないのにゲートがあって料金を徴収、このパス&IDが威力を発揮した。

    国立公園めぐりでは入場料がバカにならない。1台5ドル、6ドルというところもあるが、有名どころは車1台25ドル。グランド・キャニオン、ザイオン、ブライス・キャニオンは各25ドルだったので、それだけですでに75ドル、さらにグレン・キャニオン(パウエル湖)15ドル、ナチュラル・ブリッジ6ドルで計96ドル。ここまでの1週間あまりで十分に元は取れている計算だ。


   ゲートを通過すると右手に大きな駐車スペース。人気がある公園なので、ピーク時には園内では駐車場不足で交通渋滞を起こすほど、と日本のガイドブックに書いてあった。グランド・キャニオンの一部やザイオンと同じように、駐車場と人気のスポットを結ぶシャトルバスを運行し、車の流入を減らしているのだという。

 ただし、ザイオンのように車を完全にシャットアウトするのではなく、自分の車でも回れる併用方式。それもシャトルバスはサンセット、サンライズ、ブライス、インスピレーションの人気ポイントが集中するゲートに近い北側だけ。

   レインボーポイントなどがリムに沿って続く南側は自分の車で行くしかない。

 そこで、まず南側の端のレインボーポイントまで行って、東側(右側)に5つ6つと点々と続くポイントを追いかけながら北へ戻ってくるという計画を立てた。ゲートからはやや左にカーブしながら続く道へ、この道が20マイル(約30km)あまり、南の端まで続いている。






   シャトルバスが走っている人気のインスピレーション・ポイントの標識を過ぎてしばらく進むと、ほぼリムに沿った道になる。西側(右手)がなだらかな平原に針葉樹のまばらな林が続き、東側(左手)は、大きく蛇行する縁に沿って半円形になったクリフが5つ、6つ…と次々現れる。



   どれも、なだらかな平原が一気に200mから数十mの断崖になり、その壁面が風や太陽にさらされ、雨や氷結に浸食されて、大きく湾曲したクリフごとに巨大な石の彫刻のように何千、何万体並んでいる。


 その精緻な彫刻が施されたような石の彫刻群はHoodoo土柱・尖塔と呼ばれ、まるで仏像やギリシャ彫刻やエジプト・メソポタミアの像が立ち並ぶようにも見えるのは、断崖の壁面が白やピンク、薄茶色や赤みの強い茶色などさまざまな色の層が積み重なり、複雑な陰影を石の彫刻に与え、さらに太陽の光で、その印象が様々に変化するためかもしれない。







   しかもその様子は、大きく湾曲したクリフのグループごとに変わっている。地層の色の違い、地層の固さも違い。北向きのクリフと南向きのクリフでも、風向きや太陽の当たり方が変わってくる。さまざまな要素が、グループごとに違いを生んでいる。



    南から北へ一番奥まで車で行って、奥から順に大きく湾曲したクリフごとのポイントを見ながら戻ってきた。Rainbow Point の南に隣接するYovimpa PointからSwampa Canyon まで8ポイントを見て、シャトルバスが運行されているサンセット・ポイントやサンライズ・ポイント、ブライス・ポイント、インスピレーション・ポイントが集まるエリアまでやってきたが、やっぱり見どころはズバリこのエリア。





  そのHoodooのバリエーションと濃密な集積具合、その美しさは圧倒的。このエリアだけで十分、ブライス・キャニオンの魅力を伝えていると思った。


  それだけに、車も人も、南側とは比べものにならない。広いエリアに展開する駐車スペースも、ポツリポツリと開いている程度。幸い、私たちはお目当てのサンライズ・ポイントの近くに停めることができた。







  本日のハイライト、サンライズからサンセットまで時計回りにQeens GardenからNavajo Loopへ2つのトレイルを辿って谷の底まで降り、自然の彫刻の林をめぐってリムまで上ってくるトレイルを歩く。





  細密彫刻が施されたような石の柱群やエジプトの女王様の像のような石。自然が作った何千体も続く石の彫刻を上から眺めるだけでなく、下から見上げ、間近から眺め、触れる。

 その一つ一つのディテールに驚嘆し、その巨大さに唖然とする。









  この日はすごい風、体が吹き飛ばされそうになるほどの強い風が砂と石の谷を吹きぬけ、砂埃を舞い上げる。


 カウボーイのようにハンカチをマスク代わりに砂塵よけにした変な格好で歩き回る。薄茶色の石の林と、真っ青な空と雲のコントラストが飛び切り美しい。















  ゴール間近「Wall  Street」と名づけられた、摩天楼のようビル群にちなんだ石柱が立ち並ぶ谷底(その谷底から木が一生懸命に遥か上空の青空目指して高く伸びている)から続く急な勾配に、ジグザグに切られた道を登る。


  「まるで、インディー・ジョーンズの世界みたい」あえぐ坂道にも、文句も言わず嬉々として、興奮状態で上っていく相棒。

  高度を上げ、石の摩天楼の上に上がると、今度は石の彫刻群が目に飛び込んでくる。














  写真を撮りながらゆっくり歩いて、4.6kの道のりを2時間あまり。ゲートでもらったガイド紙に「World best 3-mile hike!」と赤字で書いてあったのも納得、大満足の3マイル(約5km)。











  しゃべる相手が私しかいない(周囲はだいたい日本語の分からない方ばかり)のに、この瞬間の感動をとどめておく事ができないのか「絶対に下まで降りてこれは体験するべきよ!」と力説していた相棒が、展望台で「絶対に見るべきですよ」と見ず知らずの人に話しかけている。日本人観光客を見つけて思わず話しかけたらしい。


  前日のザイオンでも大感激していた相棒さんですが「ザイオンも最高だったけど、ブライス・キャニオンの方が感動したかも」日替わりで主役が交代だ。













  本日も、ホテルに一度チェックインして、サンセットを見に戻ってくる予定。モニュメント・バレーと違い、今日のホテルは近い。10kmたらず。ホテルに隣接してガソリン、ゼネラル・ストア、レストランがある。




  日没は8時ごろ(カリフォルニア時間7時)なので、夕食を先に済ませる。本日のチョイスはモーテルに並んでいたレストランでステーキ。ただし、2人前を頼むなんてことはやめました。これまでのレストラン経験で、アメリカのレストランの量の多さは痛感。


  そこで、この日はステーキ1人前、サラダ1人前というオーダー。サラダは予想通りのデカ盛り、ステーキは、肉好きの相棒によると「ちょっと物足りなかった。1人前ずつ食べたかったかな、だっておいしかったもの」。私はほどほどの量で大満足。ラズベリーのドレッシングでいただいたサラダが期待をはるかに超えるおいしさ。本日の満足度に大いに貢献。お値段は35ドル(29.40+チップ)と、まずまずリーズナブル。



  8時過ぎ、再びブライス・キャニオンのリムへ。ブライス・ポイントで夕日を迎える。太陽がリムの向こうに沈んでいくにしたがって、光を浴びていた遠くの石柱たちの輝きが下から順に上がっていく。クリフに近い石柱たちはすぐに影に入ってしまい、その色を濃いものにしている。その分、光を浴びている石柱たちの輝きが一層に増す。





  静かに暮れていく一日を、こうして石柱と向かい合っている観光客はポツンポツンと5、6人、数えるほど。今日という日は私たちに見つめられながら、リムの林の向こうに消えた。後に残されたオレンジ色の太陽の最後の光も、群青色の空にすぐに包まれていく。






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