2013年9月12日木曜日

アメリカ西部の旅
2012年5月22


日の出のグランド・キャニオンを見に夜明け前からDesert Viewへ。感動の余韻を脳裏に、東ゲートからAZ64でグランドキャニオンを後に。 
Cameronの南でUS89へ、Tuba City Air Portで今度はUS160(Navajo Trail)に入り東を目指す。
カヤンテKayentaの町でUS163へ道をとると、モニュメントバレーMonument Valley は近い。朝が早かったのでMonument Valley到着は午前9時前。朝のモニュメント・バレー・ドライブは最高の思い出。
次はナチュラル・ブリッジNatural Bridge National Monument。3番目のユタ州入り。メキシカンハットMexican Hatの町を過ぎ、US163からUT261へ。すぐにUT316へ左折してグースネック州立公園まで行き、昼食。
Uターンして再びUT261で北上する。UT95とのT字路で左折してナチュラル・ブリッジ。2時間あまりで公園内を一周。
帰路はUT95を東へ走り、ブランディングBlanding の町でUS191に合流。南へ走りBluffの町が今夜の宿。でも、晩御飯も食べずに再び夕暮れ迫るモニュメントバレーへ。
The Longest Dayの最後は、真っ暗なBluffまでの月明かりのドライブ、こちらも忘れられないドライブ。


走行距離=420マイル

宿:ユタ州Bluff (Kokopelli Inn $94.36

給油:1回$32.03=Mexican Hat

買い物:K&C store Bluff $24.87

入場料:momument valley entrance fee $10








  かなり寝不足気味だが何とか4時には起き出し、5時過ぎにホテル発した。前日、アーリー・チェックアウトを確認したらフロントは24時間対応。ま、当然ですけど。

 薄明かりの中、東の端に近いLipan Pointへ急ぐ。太陽はまだ顔を出していないが明るさをグングン増していくなか、やきもきしながら30分のドライブ。

 ポイントへ到着して5分ほどすると東の尾根がオレンジから金色に変わり、最上部だけが一斉に明るく輝き始めた。日の出の瞬間、Desert Point に立つウォッチタワーが、上る太陽で空が金色に染まる中、真っ黒にポチッとシルエット。

 その輝きを受け、眠りから覚めたリム最上部の輝きの帯は、目の前のリムから何10キロも先まで一斉に広がっていく。今日は空気も澄み渡っている。雲が少しかかり、しばらくするとその輝きは5分間ほど失われたが、雲が切れ、再びオレンジ色の日差しが戻ってきた。その間、リム最上部の輝きの帯は少しずつ谷の下を目指して縦に広がっていく。


 複雑に入り組んだリムの水平的な広がりの造形と、色彩のニュアンスを含んだ地層の垂直的な変化とが結びついて作り出すこの圧倒的で繊細な渓谷美を、朝の光が作り出したオレンジ色の光と影の微妙な陰影が、より深みのあるものにしている。

 吹き抜ける冷ややかな風に、思わずウィンド・ブレーカーのジッパーを上げる、キリリと身の引き締まるよう夜明け前の澄み切った空気も、この絶景の思い出を一層忘れがたいものにしてくれた。

 来てよかった。素直に感動でした。


 6時過ぎ、東リムを後にする。さらに東へ、州道64号で高地のリムを下り、すべて砂漠のような荒涼として台地が続く道を走る。




 すると、途中に生まれたてのグランド・キャニオンのような地形に遭遇した。真っ平らな台地に、黒い影のような太い線がうねうねと続いているように見えたが、道路に近づいた黒い影をよく見ると、川が大地を削って数十メートルの垂直な谷が出来ている。
 一か所、見物できるところがあって、まだ店開きしていないお土産屋さんも。車を降りて川をのぞいてみると、水はほとんどない。この川はグランド・キャニオンに注ぐコロラド川の支流のようだが、これから何百万年、何千万年もたてば、モニュメント・バレーのような深い谷になるのだろうか。

 本日、目指しているのはまず、午前中にモニュメント・バレー。そしてナチュラル・ブリッジNatural Bridges National Monumentまで足を伸ばし、できればもう一度、モニュメント・バレーまで戻って夕日の景色を見てみたい…。


 今回の旅行で私たちがこだわったのがグランド・キャニオン、次にイエローストーン、そしてモニュメント・バレー。この3カ所は徹底的に味わい尽くしたい、後悔はしたくないと、最重点ターゲットにしていた。これからも連日、欲張り、ハードなプランが続くが、その中でも最も欲張りな一日がこの22日。旅のスタート、まだまだ体力・気力十分なうちに、グランド・キャニオンとモニュメント・バレーの2大スポットを徹底的に堪能し尽くしておこうという熱い決意だ。

 日の出のグランド・キャニオンのリムを下り、US89号線上にあるキャメロンCameronという小さな町の手前で89号線に合流、さらに飛行場があるチューバ・シティTuba cityUS160号線へ右折、東を目指す。ズーッとほとんど草木もない、荒涼とした大地を時速110120kmでひたすら突き抜けていく。

 途中、砂漠のど真ん中で、州道のAZ98との分岐。明日は、モニュメント・バレーからここまで戻ってきて、このAZ98へ右折し、Lake Powell 周辺のAntelope Canyon などを見学する予定。左手に見えている高地がそのLake Powell付近、のはずだ。

 モニュメント・バレー南側の最寄りの町Kayentaをあっという間に通り抜ける。ガソリン・スタンドやファースト・フード店のある町中の交差点でUS163へ左折、北に向かう。町を出て、また砂漠の中をしばらく進むと右手に、砂漠に巨大な岩の塊がニョキ、ニョキと聳え立つ風景が見えてくる。2日半ほど走った景色とはちょっと違う。本当に、映画でおなじみのあの遠景だ。

   思わず道路脇に車を止め、撮影。私だけでなく、アメリカの人?も車を止めて写真を撮っている。でも、こんな景色なんて、本当は目じゃなかった。近づくにつれて、右手に連なる様々な岩の塊は、形といい、大きさといい、それは確かに映画で見た通り、土煙を立てながら走り抜ける駅馬車や、騎兵隊がいたあのシーンそのままに本物の風景になっていったのだ。



  Welcome Utah の看板を通過すると(モニュメント・バレーはアリゾナ州とユタ州の州境に広がっている)広い1車線だった道路が2車線になり交差点が現れる。Gouldings Lodgeの大きな看板の交差点で、ずっと右手に見えていた、「名画のシーン」のような岩の塊ビュートの真っただ中、モニュメント・バレーへ一直線に続くアプローチ道路へと右折する-。

  来た来た~ッ!US163から公園内に向かう道は、「西部劇」のスクリーンの世界へ飛び込んでいく3D映画のような気分。でも、この景色さえ、映画館の看板を見ているようなものだった。本当のお楽しみは、館内に入らないと手に入らない!

  ゲートで入場料(二人で10ドル)を払う。交差点から5マイルほど、小高い丘に立派なビジターセンターとホテルが見えてくる。丘の裾野が巨大な駐車場で、最上部が展望台とビジターセンターとホテル。朝9時前、駐車場はまだガラガラ。バレー内には周回道路があり、ガイド・ツアー・トラックに乗って観光ポイントを回るというのが普通のコース。しかし、自分たちの車でも周遊することができる、道はダートコースだが、普通車でも大丈夫と聞いていたので、最初から自分たちの車でのチャレンジを決めていた。



  駐車場を見回し、周回道路の入口を探しながら進む。駐車場の最上部まで行って、左へ回り込み、50100mほど行くと、砂地のダート道らしきものを発見。ゲートも案内板も気が付かなかったが、ダート道に入り込んでいく車が見える。よし間違いない。

  ダート道はいきなり右に急カーブ、結構急な砂地の傾斜道を下りながら左へ右へ急なカーブが続く。結構な急な斜面もあるが、普通乗用車でみんな平気で乗り入れている。こちらも躊躇せず、ダート周回道路まで一気に下る。車の数も少なく、対向車もない。比較的道路状態のいいところを選びながらゆったりと車を進め余裕もあるほど。フロントガラスの向こうには、「映画」の世界の本物が迫ってくる。うえしくなってちょっと車を停め、記念撮影。



  乾燥した広大な赤茶色をした砂地から、裾の広がったテーブル状の台形をした巨大な濃茶色の岩の塊・ビュートが、澄み切った青い空を背景に、近くに、遠くに、立ち上がっている。昔見たジョン・ウエインの映画のさまざまなシーンに登場するこのビュートのある光景は、私たちにとって、アメリカ西部そのもの。いつか、本物を見に行ってみたいと、映画を見るたびに夢見ていた。その景気が、目の前に、至近距離から圧倒的な量感とスケールで存在していた。

  ダート道を下り、一番最初に降り立ったのが立札番号番、The East and West Mitten Merrick Buttesのポイント
私たちの左手遠くに大きなSential Mesa、その先にBig Chief Castle Butteなどが背景のように広がり、私たちの目に前には中央にイースト・ミトン、少し遠くウエスト・ミトン、さらに右にメリック・ビュートMerrick Butteと3つのビュート。

  間近から見るビュートに「すごい、この眺めは何の映画だったかね」「本当に映画の世界ね」お互いに感動してしまって、しばし会話がかみ合っていない。やっとあたりを見回すと、広い駐車スペースにはナバホの人が敷物を敷いた地面にお土産を並べ始めていた。なるほど、これならお土産の売り上げも上がりそうだ。


   ここからルートに沿って公園内の名物スポットを訪ねる。絵になるスポットには小さな立札が立っている。Merrick  Butte  Elephant  Butte。 周回道路の道は平たんで、わだちもないのでスタックの心配もなさそうだ。3本の細長いビュートが並ぶThe Tree Sisters に、ジョン・フォード監督がお気に入りだったという John Ford’s  Point。ここには牧場のような施設も。


  ここから道は時計反対回りの一方通行になって、Rain God Mesaを真下から見上げSands SpringからSpearhead Mesa の西側を抜ける。周回道の東を北上してアーチストの名に恥じない雄大な西部の風景が広がるArtists  Point  Overlookまで行き、最後は私たちのイチ押しNorth Windowへ。


   朝少し早かったお蔭だったのだろう、車も人出もまばら。このスポットは、あのスポットは…映画のシーンを思い重ねながら赤い砂だらけになりながら、車を降り、「ほら、そこに立って」と写真を撮り、夢中で歩き回って再び車に乗り次のスポットへ。途中、馬の背に揺られながら、スポットめぐりをしている家族ずれグループに出会う。子供たちが嬉しそうに、ちょっと自慢げに、私たちに手を振る。本当に幸せそう。



  僕たちが回り始めたころは、観光客を乗せたツアー用のトラックどころか、一つのスポットで出会う観光客も一組いるかいないか。静かにマイペースで自分たちの世界に浸れたが、周回道路の最後に近いArtists  Pointごろから車や人が増え、ナバホの子供が店番をする土産屋もそろそろにぎわいを見せだした。

  ビュートが点在する荒野を、駅馬車が砂煙を上げながら地平線の向こうからやってくる-そんな映画のシーンの舞台になった North Window の荒涼としたパノラマに浸っていると、団体の観光客がドカドカやってきた。こりゃ退散だ。

  私たちがビジターセンターのある駐車場へ引き返す頃には、急な砂道を下ってくる一周ツアーのお客を満載した四輪トラックと次々にすれ違い始めた。砂地の上りに急カーブ、次ぎ次ぎに下ってくるトラックで思い通りのルートを取れず、2、3度前輪が空回りし。思わずヒヤリとしながら、駐車場に無事帰還。マイペースでのんびり回れたの~んびり2時間半あまり、これはひょっとして、最高の時間だったのかも。早起きは三文の徳です。

  お昼前の駐車場、7割ほどが埋まっていた。大きな観光バスも次々、お客を降ろしている。顔ぶれは、ちょっと意外だったがアジア系が少ない。国立公園でも州立公園でもない、ネイティブのうち「ナバホ族」自治区にあるただの公園。でも、John Ford監督の西部劇映画でおなじみのnational park 級の自然風景は、世界中から観光客が集まる、想像以上の超人気スポットだった。

   さ~て次は、このままUS163を北東に向かい、メキシカン・ハットMexican Hat の先にあるGooseneck State Parkグース・ネック州立公園へ。その後UT261で北へ、ナチュラル・ブリッジNatural Bridge National Monumentotを目指す。本当に欲張りな一日だ。とりあえずの目的地はMexican Hatメキシカン・ハットという小さな町。

   正面の平らな岩の上にメキシコ人が帽子をかぶっているような格好をした岩が見えてきくると、ヘアピンカーブでコロラド川の支流San Juan Riverを渡る。するとメキシカン・ハットという小さな町だ。町の名前は帽子をかぶったようなこの岩から名付けられた。この町で給油。ここから先、ナチュラル・ブリッジ国立公園まで100%ガス・ステーションなし。たぶん、人家も…ないはず。

   最低一日に1回。日によっては2回ということもあるガソリンの給油。地図上に名前が付いているくらいの場所なら、車社会のアメリカ、ガソリン・スタンドぐらいはあるだろう、という思い込みはまったく通じない。今日も、ガス・ステーションは、Kayentaで見かけただけ、その次がこのMexican Hat

   ガソリン・タンクが半分近くになったら、スタンドを見たら必ず補充すること、というアメリカの友達の忠告を聞かず、4年前にデスバレーからラスベガスへ戻るとき、冷や汗をかいた経験がある。冷や汗をかくだけではすまない事態が今回の旅で起こらないよう、タンク半分を回ったら、まず給油、と肝に銘じている。今回の旅でも大きなウエートを占めていたガス・ステーションの話を少ししておこう。

   店の様子は日本のセルフの店とあまり変わらない。車をガス・ポンプ前に停め、レギュラーかハイオクか選択し、ノズルをタンクに入れ、給油するという流れも変わらない。でも難物が待ち構えている。肝心要のカードだ。



   まずデビット・カードDebit Cardしか受け付けないという機械がある。ちなみに、普通私たちが持っているのはクレジット・カードだから、その時点でアウト。クレジットかデビットか選択するタイプなら次に進める。次の難問は、カードは挿入したら素早くquicklyに抜き取るというのがこちら流。そのquicklyがどのくらいのスピード、タイミングを指しているのか、加減が以外にデリケート。もう一度やってみるように、という指示に従って何度かトライした挙句、カードを認識してくれないということになることもある。

   次の障害がZIPコード(郵便番号)の入力。ここで、日本から来た僕は立ち往生してしまう。カリフォルニアの友人のコードを入れてみたり、試してみるが、うまくいかない。どんな頑固な機械でもそこのあたりまでいくと、オフィスへ行くようにという趣旨の指示が出る。

   いずれにしても、カードで買えないと分かれば、カードを持ってオフィスまで行くことになる。ポンプ・ナンバーを告げ20ドル、25ドル分(私たちの借りた車では、半分ぐらい減ったところで給油するとそれぐらいの額だった。もちろん満タン fill it up というのもOK)を給油したい旨伝えてカードを渡す。オフィスから当該のポンプで給油できるよう操作してもらって給油に戻る。代金分の給油が終わると給油が止まるので、オフィスまで戻って請求書にサイン、支払いを完了するとう手順だ。

   もちろん、そんな面倒なことは飛ばして、いきなりカードを持ってオフィスへ行くという手もある。でも私は、毎回、律儀に機械に持て遊ばれてオフィスへ出かけた。次々と現れる様々な障害を結構、楽しんでいたみたいですね。

   ガス・ステーションは私たちにとって、ちょっとしたお楽しみポイントでもあった。相棒は必ずトイレを借り、私は窓を拭いたり、ドア回りを拭いたり、スタンド付帯の便利機能もフルに利用する。ロング・ドライブでは、こうして体を動かして気分転換ってのも結構大切。

   さらにガス・ステーションは、ガスだけを販売しているということはまずない。多くはゼネラル・ストア(コンビニのような品揃えの店から、ミニスーパーのような店までさまざま)を併設している。並んでいる食品などを見て回っていると、その国、その地方の空気が伝わり、町の様子を知ることができる。黙々と給油だけして、チャッチャと出ていくより、アメリカの超田舎町にいるんだという実感ができて、結構楽しいのだ。

   メキシカン・ハットのガス・ステーションはポンプのカード挿入口に入れるだけで、給油が出来る店だった。満タン給油で31ドルあまり。

   小さな町をあっという間に抜け、砂漠荒野の中をグース・ネック州立公園へ急ぐ。地図を見ると、この公園は、町へ入る手前で渡った川 San Juanがもう少し下流で、大地を深くえぐりながらグース(ガチョウ)のネック(首)のように大きく湾曲して流れている地点にある。川はその先も蛇行を繰り返しながら Lake Powell の上流でコロラド川に合流するのだ。

   町を出て少し行くとUS163号から州道UT261への分岐点、そのままUS163号を真っ直ぐ行くと、今夜の泊まり、Bluffの町へ。UT261へ左折してすぐにGooseneck State Parkへの道路標示に従いわき道を左折。ダートのわき道を少し南西へ下ると、はるかにモニュメント・バレーを望むことが出来る展望台で道路が行き止まり。展望台に立つと足元には川の水が深く台地を削り、大きく蛇行してギリシャ文字のΩのようになっている、グース・ネック州立公園だ。川の蛇行もちょっとした見ものだが、地平線の彼方まで続く荒野の眺めもお薦めだ。
   ここでクーラーボックスからパンとチーズ、トマトなどを取り出し、サンドイッチで遅めの昼食。駐車場には車が3台、キャンピング・カーが1台。こんな辺鄙なところに、わざわざやってきくる観光客が結構いるんだ。


    グース・ネック州立公園からUT261へ戻り、北へ向かう。坦々と、ほとんど草木のない、干上がった、茶色い色彩のバリエーションが続く荒野砂漠の道は、その平原の彼方に、いつの間にか現れた段丘へと続いている。その段丘は近づいてみると、高さ2300mはありそうな断崖で、万里の長城のように見渡す限りの壮大な壁となって続いている。道は?どうやらその断崖に沿ってくねくね駆け上って段丘の上に至り、そこから北へ続いている。こんな道も日本ではちょっとお目にかかれない。

   ユタ州南部からアリゾナ州北部に広がるPlateauと呼ばれる壮大な高地。その南部にあたる一部をコロラド川が削り取り、大峡谷を造ったのがグランド・キャニオン。一方、その広大な高地・プラトーPlateauは、決して一様に平らなわけではなく、所々で津波の高波が押し寄せるような段丘と呼ばれる独特の地形が点在している。その“高波”でも特に名高いのが、段丘の末端の断崖Cliffが4つの巨大な階段状(4つは茶色の層がChocolate Criffs、赤い層はVermiliom Criffs、白っぽいのがWhite Cliffs、灰色はGray Cliffs、ピンクがかった淡い色のPink Cliffsとして知られている)に見えることから「Grand Stairecase」(大段丘)と呼ばれる段丘。

   一帯には、多種多様な国立公園が点在しているが、それらは高地と大段丘、川と水、風の風化作用が複雑に入り混じり、相互作用して生まれた風景である。大段丘のCliffが繊細、絶妙に風化したブライス・キャニオン Bryce Canyon、ザイオンZion National Park の山々の頂きの白も大段丘White Cliffsの白である。キャピタル・リーフCapital Reefには壮大なCliffが連なる。

   グース・ネックからナチュラル・ブリッジへ向かう道路が一気に駆け上がる断崖も、プラトー上の段丘が作り出す断崖の一つ。半砂漠の荒野に広がる凍りついた高波のような断崖にそって、ジグザグとスイッチバックを繰り返しながら車は駆け上る。

   登り詰めるとすぐ、左へ入る道がある。断崖の南端、Mullie Pointまで10マイル足らずのダート道だ。このポイントも段丘の端からモニュメント・バレー方面の荒野を一望できる絶景ポイントらしいが、道路コンディション(砂地道でのスタック不安)と、超強行スケジュールとの兼ね合いで、ナチュラル・ブリッジを優先、立ち寄りを断念したポイント。

   UT261を北へ走る。段丘の上まで上がって以来、対向車も見かけない。前にも後ろにも車の姿はない。広い荒野砂漠を走っているのは私たちの車だけ、上空から見れば、そんな景色になっているはずだ。そんな道を20分ほど飛ばすとUT95にぶつかるT字路に行き着く。ここまでいけばナチュラル・ブリッジNatural Bridge National Monument は間近。珍しく、UT95を東から西へ車が走っていく。やりすごして左折、5分ほど車を進めると右手の国立公園の案内板に沿って右の脇道に入る。

    メキシカン・ハットは雨と風が作り上げた作品だが、こちらは川の水が岩の台地を浸食し、穿ち、中央部がくり貫かれ、周囲の岩が取り残された橋bridgeを造り出した「ナチュラル・ブリッジ」。公園内は川に沿って平らな台地の上に周遊道路が走っており、1周すれば3カ所あるブリッジを一回りできる。

   ブリッジは、当然、川底に近い部分にあるため、周遊道からは、谷の下にあるブリッジを見下ろすことになり、ブリッジを近くで見るには川底まで下っていく。谷底までは百数十メートルから数十メートルほどしかないなので、数十分から小一時間も歩けばブリッジを間近から見上げることができる。

   公園内を時計回りにブリッジはSipapu Kachina Owachomoとあり、私たちも一番歩く時間が短いOwachomo Bridege を見に、谷を降りてみた。下りに10分。おだやかに吹き抜ける風のかすかな音が聞こえてくる中、青い空を背に、美しいアーチをちょっと遠景から、真下から見上げる景色は想像していた以上に感動的。上りに20分の道のりもなだらかな遊歩道で、私たちにはほどよいトレイル。


   ところが、日陰になった谷底を涼しげにあるくハイカーたちの姿がある。ナチュラル・ブリッジの谷は、通常、谷底には水がなく砂地があるだけ。雨が降った時だけ、鉄砲水のように激しく流れる川のようだ。なので砂地になった川底は3つのブリッジを訪ね歩くトレイルになっているらしい。うーん、ちょっとそそられた。

   谷の断崖の中間あたりには、古代のネイティブたちが住んだ居住跡もある。この後、訪ねることになるアリゾナ州のキャニオン・ディ・シェリー国立公園にも同じような古代ネイティブたちの住居跡がある。キャニオン・ディ・シェリーの方がずっと明るく、開けた大きな谷だったが、そう言えばよく似た風景だ。家の出入りが大変そうだが、よほど住みやすかったのだろう。

   グルリと車で回って2時間あまり。容赦なく照りつける太陽が予想以上にきつい。しかし各ビューポイントで遭遇した観光客はわずかに2、3組。なかなかのぜいたくだ。そんな中で出会った1組が在米の日系人、70前後のリタイア夫妻。こんな荒涼とした辺鄙なところで、見ず知らずの人と日本語で話ができるなんて、とても不思議。


   帰りはUT95号をそのまま東へ向かい、ブランディングBlanding の町の南はずれでUS191に合流、右折してブラフBluffを目指す。本日の宿のある町。メキシカン・ハットからさらに4、50kmほど東にあり、ユタ、コロラド、ニューメキシコ、アリゾナの4州が交わる「Four Corner」の最寄り町(と言っても80kmほどあるが)である。モニュメント・バレーからも80kmほども離れており、アメリカとは言え、1時間はたっぷりかかる。モニュメント・バレー、メキシカン・ハットも満室で、その次にある町がここだった。不便な町のモーテルに向かう道、前を走る1台の赤い乗用車、車窓はどこまでも濃い青い空と荒野砂漠。「あ~アメリカに来ているんだ」ふと、そんな言葉が口に出た。LAを出て、グランド・キャニオン、モニュメント・バレーを体験して、目いっぱい緊張していたのが、少しゆとりが出てきたのかも…。



   寝るには特に問題はないレベルのホテルではあったが問題が一つ。いきなり初日のセリグマンではバスの栓が壊れていたが今度はバスタブの栓がない。この日はチェックインしてすぐにまた飛び出したため、気が付かなかったが、戻っていざ風呂に入ろうとするとバスタブに栓がない。このホテル、80ドルを越すのに。本日はタオルを栓代わりに詰めて少しお湯をためました。ちょっとハズレ。チェックインしてすぐに、予定通りモニュメント・バレーのサンセットを見るために1時間ほど走る。


   途中、夕日を浴びるモニュメントの岩山を望む遠景は、絶景。何度も車を停め、前方に広がるモニュメント・バレーのビュートやメサが、徐々に深く夕日に染まっていく姿を見つめ続ける。


   


   ここからの景色は映画「フォレスト・ガンプ」にも出てきた。ガンプがマラソンで全米横断するシーンで、モニュメント・バレーを背に、メキシカン・ハット方面へ向かって走るガンプの姿が感動的だった。1本の道路が雄大な荒野を区切る1本の線のように、少しうねりながらモニュメント・バレーの巨大な岩の塊の彼方まで続いている。壮大な自然に挑むちっぽけな人間の一歩、一歩の営みが、気負いなく美しく伝わってくる感動的な風景は、今、私の目の前にも広がっていた。ホテルをわざわざモニュメント・バレーの北側の町にしたのも、この景色を時間を気にせずゆったりと見たかった、ということもあった。


   午後7時過ぎ、公園入り口の路上。夕日に染まる岩山を眺め、長~い影法師を追いながら本日の晩御飯。お昼と全く同じ中身、チーズとトマトを挟んだだけのサンドイッチ。チョー粗末だけど、リッチな夕食タイム。



   7時半過ぎ、US160を挟んでモニュメント・バレーとは逆、西側の地平線と深い青の空の向こうにきれいな太陽が静かに沈んでいく。少しずつ闇が迫る地平線に、モニュメント・バレーが黒の濃淡のシルエットに沈みながら遠ざかっていく。かすかに残っていた、西の地平線の赤い光も、メキシカン・ハットまでくると完全に濃い青の闇。


   闇の中を走る覚悟を決めていた。ところがメキシカン・ハットを出てしばらくすると、青白いおだやかな灯りが静かにあたりを覆っている。見上げると月だった。Bluff へ向かう中間あたりにある「バレー・オブ・ザ・ゴッズValley of the Gods」という公園では、モニュメント・バレーを小さくしたような岩や、巨人のたちの像が並んだような造形が、明るい月明かりに不気味にそびえている。時間は8時半。公園内の急な山道を、重装備の自転車が重そうに上っていく若者の背中を月の光が照らす。ここからメキシカン・ハットまで、まだ20kmはある。途中、水も何もない荒野の道を1時間以上はたっぷり走らないとたどり着けないだろう。



    「バレー・オブ・ザ・ゴッズValley of the Gods」の名前とこの印象的な月明かりの景色が、長い一日、とても疲れたけれど充実した一日を、感動的に締めくくってくれた。

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